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「Kindle Paperwhite 3G」で電子書籍を読む [ハードウェア]

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 Amazonで予約していた電子書籍リーダー「Kindle Paperwhite 3G」(以下、Kindle)が到着した。価格は1万2980円。すでにビックカメラなどの家電量販店では先週から販売を開始しており、Web上に使用感や関連情報などがアップされている。
 会社の同僚が先に買っていたので一週間ほど前に触らせてもらっていたのだが、実際に自宅で手にしてあらためてよさがわかった。持ちやすく、軽いのだ。重量は222gだという。この軽さはいい。どんなに性能がよくても、重いのでは価値が半減する。私は初代iPadを持っているが、持ちやすさと軽さの点では雲泥の差だ。
 箱から取り出したら、まずセットアップを行う。導入の手順はステップごとに画面に示され、それに沿って操作すれば、すぐに使えるようになる。初心者には自宅のWiFiを探し、ID・パスワードを設定するあたりが若干難しいだろうか。
 ページをめくる、メニューを表示するといった操作方法も画面で案内され、その手際はなかなかのものだ。これからの電子機器はこういった動作手順のフォローやユーザーインターフェース(UI)の出来が非常に重要であり、Amazonはこの点でAppleに次ぐ意識の高さを持っているように思えた。このときに肝心なのが、ユーザーにいかにつまづかせずに設定を終えさせるかだ。ポイントはやはりシンプルさにある。いや、ユーザー目線とでもいうべきか。ユーザーをへたな横道や堂々巡りに迷い込ませてしまうのが、マイクロソフトや日本のメーカーのだめなところだと常々思っている。
 セットアップを完了して、まず本機を使ってKindleストアから直接コンテンツを購入してみた。初めてのコンテンツは「ITの汁」というマンガ(東京IT新聞に連載)。検索して1-Clickで購入。3部作だったのでダウンロードに数分の時間がかかったが、予想以上に早かった。
 Kindleのディスプレーはモノクロで「E Ink」(電気泳動方式)という技術を採用している。Kindleにおける私の最大の興味はこのE Inkだ。私はもともと液晶パネルのバックライトが嫌いだ。視神経によくない光だと思っている。それで、当初から考えていたとおり、Kindleのバックライトをオフにしてみた。すると、やはり目に負荷がかからず読みやすい。画面は薄いグレーの地になるのだが、マンガも文字もそれなりに読める。理想はバックライトオフでも地が白いことだが、いまはそこまでは求めない。
 E Inkの弱点は、ページをめくるときに、それまで表示されていた部分が黒白でざらっと反転することだ。これは実際に見てもらわないとわからないが、ページをめくる際に、白い部分が黒に、黒い部分が白に一瞬反転する。マンガの場合この現象は特にはげしい。数人に尋ねたところ、この反転が気になる人と気にならないという人に分かれた。私は気にしないことにした。
 以前、楽天の「kobo」を使わせてもらったことがあるが、あちらはメニュー表示や動作などの反応が遅く、スムーズには使えなかった。インターフェースも悪いため、買う気にならず。その点、Kindleはそこそこの速度で動作する。もちろんiPadと比べ、ページめくりやスクロールなどほとんどの動きは遅い。しかしがまんできないほどではなく、インターフェースもそこそこ実用的だ。要するに慣れることができる。ちなみに、電源をオフにすると、万年筆や鉛筆、筆、活字など、書くことや文字に関する写真がその都度いろいろと表示される。これがなかなか面白く、粋だ。
 Kindleにもそれなりに課題はある。前述したE Inkの反転もそうだが、例えば、右開きと左開きの区別ができないこと。購入した本がどちらなのか一見してわからない場合、画面の左右どちらをタッチすればいいのか迷うことがある。縦書きであれば、当然右開きなので、ページをめくるときは画面の左側をタッチする。しかしときどき右側をタッチしてしまうことがある。このへんもまた慣れるしかないだろう。
 さて、Kindleを使ってみていちばん印象に残ったのは、PC上のAmazonのKindleストアで購入した電子書籍のデータが自動的にKindleにダウンロードされたときだ。津田大介氏の「ウェブで政治を動かす!」はテキストベースのせいもあるが、Kindleストアで1-ClickしてKindleにダウンロードされるまで、わずか1分ほどだったと思う。これまで、iPadでも何冊か電子書籍を購入したがさほどの速さは感じず、一方でKindleのダイレクト感には驚いた。注文して1分ほどで本が読めるのだ。iTunesストアでの音楽データのダウンロードよりも速い。
 取次や書店あるいは配送業者といった流通経路を飛び越え、AmazonからKindleに書籍データが直接届く。この即時性は、今後の出版のあり方や本の利用方法を根本的に変えるだろう。さらに、メモが付けられたり、文字サイズの変更、用語の意味をすぐに辞書で調べられたりできる機能性を備え、Kindleリーダーというアプリケーションを使えば、PCやタブレットなどほかのデバイスで本の続きを読むことができる(購入したコンテンツをほかのデバイスで横断的に読める)。たとえば、文筆業をしている人などが大量に資料を持ち歩くために使うツールとしては、非常に有用になるだろう(パソコンを使えば、PDFなどの書類も保存・閲覧できる)。今後日本でのコンテンツが充実すればの話だが。
 従来のタブレットと異なり、文字(長文)を読む気にさせる、それがKindleだ(バックライトオフの場合)。米国在住のある筆者はKindleをかなり活用していると言っていた。米国の電子書籍利用はだいぶ進んでいるらしい。戸外で急に本が必要になるといった場面はまずないだろうが、今後は3G(携帯電話回線)での利用も試してみたい。操作性などにおいてまだこなれていない点はあるとはいえ、日本でもようやく実用的な電子書籍リーダーが登場したといっていいだろう。紙の本と並行して読んでいきたいと思う。



国産の低価格放射線測定器 [ハードウェア]

 ついに国産の低価格の放射線測定器(*)が発売される。エステー株式会社と首都大学東京が共同開発した製品「エアカウンター」だ。シリコンフォトダイオード(半導体)を使用した小型の測定器で、価格は税込み1万5,750円。発売は10月20日予定とのことだ。
 3月11日の原発事故発生以降、国内で売られている放射線測定器の価格は通常の5倍あるいはそれ以上に跳ね上がった。しかしこの危機的な状況において背に腹は代えられず、やむなく高額の製品を買った人が多い。現在でも、中国製が3〜6万円、ウクライナ製が10万円前後、米国設計のシンチレーター+フォトダイオードタイプが5〜7万円ほどで売られている。たぶん、以前の値段はいずれも1〜2万円程度だったはずだ。販売元などの説明は、世界的に放射線測定器の需要が増え、ガイガー管などが不足しているので価格が高騰しているというもの。その真偽はともかく、この状況において、優秀で安価な電子機器の製造を得意とする日本メーカーから低価格の放射線測定器がなぜ発売されないのか、多くの人が疑問に思っていた。
 私はこれまで、3台のガイガーカウンターを使ってきた。最初に友人から借りた中国製「JB4022」は検出値に大きなブレがなく、そこそこ実用的な製品だった(検出値は若干高めに出る)。連休にいわき市に帰省した際にはこれを持って行った。次に自分で購入した中国製「SW83A」は、誤差や検出値の振れ幅が大きいため(三鷹の室内で0.08〜0.29マイクロシーベルト/h)、高線量の場所の判断くらいにしか利用できなかった。たぶん、検出値を割り出すプログラムがおかしいのだろう。これはハズレだった。最近購入したウクライナ製(TERRA P+、型番MKS-05)は誤差が小さく、値も安定している(三鷹の室内で0.09・屋外で0.12マイクロシーベルト/h)。ただし、中国製はもちろん、ウクライナ製も国内販売店の対応には不安が残る。特に初期不良や故障した場合の対応は、一般的な日本製品の場合と異なるので注意が必要だ。
 個人用の放射線測定器はそれほど高精度ではなく、本来は目安程度にしか使えないものだ。ガイガーカウンターはその構造上、検出値に誤差が生じる。その点、シンチレーションタイプやフォトダイオードタイプは計測時間こそ長いものの、比較的安定した性能を備えているようだ。福島原発の現状を考えれば、できるだけ日常における空間線量の変化を判断できるような製品が望まれる。実際に測定器を購入した人は、自分の機器が表示する値の「癖」を覚えながら、計測を行っていることだろう。つまり、中国製の粗悪品であっても、差分を読み取ってなんとか変化を察知できる。私がおすすめなのは、前述のガイガーカウンター「TERRA P+(MKS-05)」または米国設計(中国製造)の線量計「DoseRAE2」だ(実勢価格5万円程度)。MKS-05は空間線量や地表線量を計測するのに適し、DoseRAE2は日常的に携帯し、一定期間に受けた合計の線量を計測するのに向いている。
 日本製の放射線測定器はこれまでも販売されていたが、いずれも12万円以上と高額だった(しかもamazonや楽天などでは扱っておらず、入手しにくい)。事故から4カ月以上経ったが、放射線測定器が必要とされる場面はまだまだ多く、事態はこの先も続く。行政がいまもって正確な情報の公表を行わない以上、市民は自分たちで自らの安全を守っていくしかない。雨樋の下や側溝など、高線量の場所は身近にも存在する。子供が遊ぶ砂地や草地、すべり台の下などはぜひ計っておくべきだ。子供たちが放射性物質を吸引してしまうことは絶対に防がなければならない。
 われわれの関心はいま、呼吸あるいは食品や水から放射性物質を取り込むことによっておきる「内部被曝」に移っている。場所の線量は測れるが、残念ながら個人用の携帯型測定器では食品や水の汚染は計測できない。本来であれば、食品や水などの汚染チェック体制に万全を期したいところだ。食品専用の測定器の全国的かつ早急な普及が望まれる。
 「エアカウンター」の性能のほどは分からない。シンチレーターではなく、半導体による検出方法のため、どれほどの性能や使い勝手を備えているか見極めてから購入を検討すべきだ。検出に10分ほどかかるという情報もTwitter上に流れている。開発においては首都大学東京の放射線安全管理学の福士政広教授が監修したという。放射線などについての基礎知識を掲載した小冊子も付属する。これまでの製品と比べれば、1万5,750円は妥当な価格だと思う(※発売前に9,800円に値下げされた)。比較的線量が高い地域に住み、まだ放射線測定器を持っていない人には入手しやすい製品といえる。ただし私は、安さだけですぐに飛びつかないほうがいいと思っている。日本製の低価格製品の発表があった以上、今後は従来品の価格も下がるだろう。類似の日本製品も出てくるはずだ。のちのち買い直すことがないよう、計測値の精度を含め、利用した人の評判を聞いてから判断したい。

●「エアカウンター」の詳細(プレスリリース):
http://bit.ly/nJHf9y

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エステー株式会社の「エアカウンター」。放射線測定器を購入してまず最初に行うのは、ビニール袋に入れること(機器自体を汚染しないようにするため)

7月29日追記:
今後は、放射線検出器「シンチレックス」搭載の製品も期待できる
http://on.wsj.com/pYRKCc

10月15日修正:
「放射線測定器」と「ガイガーカウンター」「線量計」の用語の使い分けをした

10月21日追記:
福島で作られたガイガーカウンターについて
http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-927.html

2012年7月25日追記:
私の友人3人が「エアカウンター S」を購入して使用しはじめた。それぞれに計測結果を聞くと、安定した信頼できる検出値を表示するようだ(じゃっかん、外部ノイズの影響を受ける)。ただし、計測値が少し低めではないか、という意見もある。
http://www.st-c.co.jp/air-counter/products_s/cara.html

iPhoneおよびiPadに接続して使用する「ポケットガイガー」(税込価格3,700円):
http://www.radiation-watch.org/p/blog-page.html
FRISKのケースを利用する(加工を代行する業者もあり)。計測精度に優れ、プライスパフォーマンスが非常に高い。計測には10分以上を要する
「ポケットガイガー Type2」(税込価格5,250円・組み立て、電池不要)http://www.radiation-watch.org/p/blog-page.html

*放射線測定器には、ガイガー管を使った「ガイガーカウンター」と、シンチレーターを使った「シンチレーションカウンター」、シンチレーターとフォトダイオードなどを組み合わせたもの、フォトダイオードを使ったものなどがある。DoseRAE2などは、人体が受ける放射線の合計量をモニタリングする「線量計」の分類に入る(ただし、空間線量を計測する用途にも使える)。






iPadの不調 [ハードウェア]

 1カ月ほど前から、iPadが自宅の無線LANにつながりにくくなった。接続したり、切れたりを繰り返す。最初の2カ月ほどは問題なかったのだが、ある日から突然Wi-Fiルーターを認識しない状態が増えた。鳴り物入りで登場した製品の割にはなんとも情けない話。Wi-Fiにつながらなければ利用価値は半分もないのがiPadというデバイスだ。デザインもよく、電子書籍リーダーにもなる革新的なタブレットPCなのだ、と言われようが、不具合があっては元も子もない。
 アップル社の製品に限ったことではないが、デジタル機器というのは脆弱である。ソフトとハードの混合体であるせいか、どこか不安定なものをはらんでいる。設計から販売までの期間がどれくらいなのかは知らないが、見切り発車で出荷している気がしてならない。そういう点で、新製品に飛びつくのはリスクを伴う。私は仕事の関係で発売後すぐにiPadを買ったのだが、そうでなければもう少し様子見をしてから購入を考えた。
 Webを検索すると、iPadのWi-Fi接続不具合の報告はけっこう多い。アップル社のサポートセンターに電話すると、Wi-Fi接続の不具合は初めて聞いたというような受け答え。そのくらいの情報共有もなされていないのが、同社のサポートセンターだ。紋切り型の対応のうえ、90日間の電話無償サポート期間が切れたので、電話対応は有償になりますと若い女性があたりまえのように言う。AppleCare(有料サポート)に加入すれば云々などと言うので、引き取りで修理させることにした。もちろん保証期間内だ。
 デジタルだとか画期的だとか言っても、所詮はこの程度の脆弱な技術力の上に成り立っている。いつまでたっても開発途上なのがパソコンの長所であり、短所でもある。もちろん、問題がなければ利便性は高い。私は25年ほど前からパソコンを使っているが、この道具に対する認識は基本的に変わらない。ただし融通のきかなさは、年々強くなっている印象はある。以前は、市場にユーティリティーソフトなどが充実して流通していたが、近年はそういったユーザーによる不具合対処法の道も途絶えた。おかしくなったら、メーカーに頼るしか方法がない。まだSFアニメの世界にとどまっているが、自己修復機能や冗長性のあるマシンが出るのはいつのことだろう。

膨張したバッテリー(2) [ハードウェア]

 16日(土曜日)にアップルジャパンのサポートセンター(AppleCare Service)に引き取られた故障MacBookが、今日戻ってきた。対応が非常に速い。日曜に到着して修理し、月曜日には出荷したことになる。
 修理明細書を見ると、「ロジックボードの故障により、フリーズする症状及び電源が落ちる症状を確認しましたので、ロジックボードを交換しました」と書かれてある。あまり期待はしていなかったが、サポートセンターで不具合が現れたのは運がよかったといえる。予想していたのは、不具合が現れずにそのまま戻ってくるシナリオだった。
 パームレストのひび割れによるトップパネルの交換は同センターの担当者と約束してあったが、そのほかにDVDドライブとキーボード、トラックパッド、ディスプレイベゼルも交換されていた。故障していたDVDドライブと今回のバッテリーパック膨張問題は別のような気もするが、なにか関連があったのだろうか。トップパネルはたぶんキーボードとトラックパッドと一体型なのだろう。これでほとんど新品のような状態になり、バッテリーパックの膨張に関連する問題はたぶんクリアした。先日の新品バッテリーと併せて、すべて無償交換だ。
 明細書には、交換部品の説明がカラー写真入りで印刷され、修理内容がわかりやすい。ハードディスクは以前とまったく同じ状態になっており、修理に際して初期化などは行わなかったようで、すぐに利用できた。3時間ほど使っているが、いまのところ異常は見られない。
 このマシンの不具合に関してはこれまでに長い経緯があり、妻は2年ほど不便を味わってきた。また、最初の電話担当者はラチがあかなかった。それらを除くと今回は、同センターがバッテリーパックの不良を認めてからほぼ7日間で問題が解決したことになる。正当な使い方をしてきたので、当然の要求といえば当然なのだが、いろいろ差し引いてもアップルジャパンのサポートセンターの対応は迅速といえるだろう。これまでの経験において製品の修理対応で速かったのは、子どものオモチャだ(たしかバンダイだったか)。アップルジャパンはそれと同等で、判断と作業、配送が速い。しかもきっちり直し、こちらの要求以上の修理を実施してくれた。サポートセンターのS氏の言葉に嘘はなかった。膨張問題はそれほどに根が深いといえるのかもしれないが、元をたどれば本当はバッテリーセルの製造メーカーの問題でもある。ユーザー告知のことは別にして、ここはアップルジャパンのサポートセンターの対応と手際のよさを認めることにしよう。

膨張したバッテリー(1) [ハードウェア]

 先日、妻が使っているMacBookをふと見たら、底面のバッテリーの厚みが1.5倍ほどになっている。驚いて手元で裏返してみるとバッテリーパックが全体に膨張していた。破裂を心配しながら、急いで本体から外す。幸い発熱はない。中央部を中心に、上面で3mm、底面で5mmほど膨れていた。
 すぐに、アップルジャパンのサポートセンターに症状を連絡すると、中国人らしき女性から意外な返答が返ってきた。「バッテリーは使っていくうちに膨張することがある。破裂を防ぐために膨張するように作ってあり、それが仕様。異常ではない。交換の場合は有料になり、費用は1万940円」という。そのときは納得できず、サポートの話を聞くだけで電話を切った。
 妻のMacBookは以前から、勝手に電源が切れたり、再起動したり、日本語入力ができなくなるなどの不具合が頻繁に起きていた。やはり、サポートセンターに問い合わせて対処方法を聞き、PRAMのクリアやOSのクリーンインストールなどいろいろな処置をしたが改善されなかった。最近では1日に10回ほど、シャットダウンが起きるという。膨れたバッテリーを見て、たぶんそれらの原因はバッテリーパックにあったのではないかという考えに行き当たった。
 試しに、バッテリーパックを外した状態(ACアダプター接続)で妻に使ってもらうと、不具合が発生しなかった。トラックパッドボタンのクリック感も元に戻る。思えば、バッテリーパックは少しずつ膨らんできていた。それがこの数日で一気に膨張したらしい。それにしても、膨張するというのはいかがなものか。それが仕様だというメーカーの意識は大いに疑問だ。破裂は防げるにせよ、これによりパソコン本体が圧迫されて、さまざまな障害が出る。Webで検索すると、MacBookのバッテリーの無償交換プログラムが2008年5月から2009年5月まで実施されていて、すでに終了している。アップル社はこのバッテリーの膨張を問題として認めていた。そしてやはり、ユーザーに通知はしていない。
 考えをまとめて、翌日再度サポートセンターに電話する。今度は日本人の若い男性が出た。先の女性と同じことを言うので、ユーザー登録をしてあるのに無償交換プログラムの通知もなく、すでに終了したから有償というのは誠意がないこと、また交換プログラムを提供したということは問題を認めているということ、本体に異常が生じている点などを指摘した。サポートの男性は、これ以上は自分の判断では対応できないので上司に代わると言った。
 代わって、S氏が電話口に出た。先ほどと同じ点を指摘し、問題を認めた以上無償交換プログラムを終了するのはおかしいと伝えると、その都度「仰るとおりです」という。さらに、バッテリーを外すと本体の不具合が解消されたことなどを話す。新品のバッテリーを送るとのこと。これを取り付けて様子を見ることになった。
 実はS氏もユーザー登録済みの人には、事前に不具合やプログラムの通知を行うべきだと考えていた。現在までそれは実現してないので、社の方に私の意見を伝えるという。しごく当たり前のことなのだが、そう簡単に同社の対応が変わるとは思えない。バッテリーの問題は過去にも何度かあったからだ。しかし、珍しく理解のあるS氏であり、ここに少しの救いがあった。新品のバッテリーを取り付けても異常がある場合は再度連絡をすることになり、電話を切る。

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膨張したMacBookのバッテリー
 

アップル・ブランド [ハードウェア]

 初代iPod nanoの一部の機種で、バッテリーの発熱・発火が問題になっている。アップル社製品でのバッテリーの不具合はこれが初めてではない。以前もiBook G4で同様の事故があった。その当時、我が家でもiBook G4を使っていたので心配になり、同社のWebサイトを閲覧したところ、トップページには不具合に関する注意喚起などの文章が書かれていなかった。デザイン最優先のトップページに「不具合のお知らせ」とは記載できない雰囲気だ。今回もまた、Webページでユーザーへの注意告知がなされておらず、経産省から是正するよう指導を受けている。
 アップルという会社は、自社のブランドイメージの保持に対して強いこだわりをもつ。ガレージでの少数生産から出発し、低迷の時代はあったもののパソコンメーカーとして成功、その後iPod人気でさらにデジタル機器や楽曲をも提供する先進企業として知名度と売り上げを高め、現在に至っている。2010年第2四半期の売り上げ高は、135億ドル(約1兆2,584億円)。
 同社が経営する銀座のアップルストアを初めて訪れる人は、そこがパソコンやデジタル機器の販売店とは思えないだろう。店員の服装こそシンプルだが、外装・内装ともなにか高級ブティックのようなたたずまいを醸し出している。この店を見て明らかなように、アップルという会社はもはや単なるメーカーではなく、DiorやPradaなどといった欧米の高級ファッションブランドと同じ指向性を持つ企業になった。
 確かにアップル製品は、ハードとソフトのデザインが優れ、OSを含めた操作性は悪くないと思う。この点が認められてか、最近はユーザー数が増え、ノートパソコン(iPad含む)の国内シェアが11%に達したともいわれている。一方でWindows陣営はここ数年停滞ぎみだ。
 それにしても、パソコンやデジタル機器関連における新製品の発売サイクルの短さは尋常ではない。どのメーカーにもいえることだが、長期テストなどする余裕もなく出荷しているパソコンやデジタル機器には不具合がつきものだ。服飾関係の商品とは中身が違う。この事実にフタをして、高級ブランドのイメージづくりに邁進するアップル社の姿勢には、疑問符がつく。こちらは、それでもほかにましなものがないからアップル製品を使い続けているのだ。私は、同社がいうユーザーエクスペリエンスがどうしたなどという話は、七掛けくらいで聞いている。アップル社の社長は、自社製品は完璧でなければならないと思っているようだが、そんなに簡単にいくものか。

iPadその後 [ハードウェア]

 iPadを使い始めて、約2カ月が過ぎた。その間、各種のアプリや電子書籍、写真集などをダウンロードして、このタブレットコンピューターの面白さを探ってみた。それほどたくさんのアプリを試した訳ではないが、いま感じるのは率直にいって物足りなさだ。
 確かに、内蔵センサーを用いた動画(「Alice in Wonderland」など)やGPSを利用した天体アプリ(「Star Walk」)には新鮮な驚きがあった。村上龍の小説「歌うクジラ」は坂本龍一の音楽がBGMとなっており(ごく一部に挿入)、この試みも新しい。また、液晶の画質が高いので、写真集はとても見栄えがする。しかし、いずれも私にとっては決定打になっていない。
 音楽アプリでリズムパターンや曲を作っても、外部の音源との連動はかなわず。そもそもMIDIで接続する術がないからだ。作成したオーディオデータは、メール添付でパソコンに送るか、サーバーにアップロードする必要がある。また、以前も書いたがiPadの日本語入力プログラムは、まだまだ原始的なレベル。もちろん、キー入力はやりにくく(iPhoneよりはましだが)、文章作成には適さない。
 これまでのコンピューターの場合、「入出力」が仕事(動作)の基本となり、面白さのベースでもあった。インプットは、キーボードやマウス、ペンタブレットなどを使って行う。ユーザーがマウスやアプリケーションを使ってなにかしらインプットすると、コンピューターがそれを処理して、結果をアウトプットするという流れだ。アウトプットというのは、画面に表示する/プリンターで印刷する/音を再生する/接続された周辺機器を動作させる——など。入出力などというと、どうも堅苦しい表現であり、いまどきそんなことをいっているのは私くらいなものだろう。
 iPadのインプットはもっぱら指。そして、アウトプットに必要となるインターフェースが少ない。要するにiPadは、そのような古い流れを超えた使い方をするように設計されている。しかし、それに応えたアプリはまだ登場していないように思うのだ。その昔にもてはやされた「マルチメディア」の域を出ていない。とはいえ、人によってはiPadを高く評価している。ペイントソフトなども人気が高いようだ。ただしそのレベルであれば、パソコン+ペンタブレットという組み合わせで代用できる。
 可能性という点では、やはり教育用だろうか。文章、写真、動画、地図、GPS、音声など、教材を面白くする要素はたくさんある。宮崎駿氏が指摘するように、PCで本当の教育はできないという懸念は残ると思う。タッチパネルを指でなぞり、「リンク」や「検索」で得た知識がどれほどのものか、いまはまだだれもわからない。少なくとも、現在使われている教科書や教材よりはマシかもしれないということくらいだ。教育において圧倒的に不足しているのは感性の体験であり、創造性を育むことだろう。
 例えば、シンセサイザーが一般の人々の手に届く存在になった時代のことを振り返ってみる。この新しい楽器は、それまで聴いたことのない音を合成して作り出すことができた。そしてさまざまな音や音楽が生まれ、作曲において「電子」あるいはデジタルのメリットが生かされたのは記憶に新しい。しかし、現実はどうだろう。各種の音源や合成方式、テクノロジーが投入されたシンセサイザーだったが、最近ではサンプリング音源が主流となり、ただの再生機のような存在になってしまった。つまり、われわれが当初描いていたイメージとは異なる場所に落ち着いている。これを考えたとき、果たして今後iPadが使われるのか否か、容易には予想できない気がする。重要なことはネットワークやクラウドの側とその使い方にあって、もはやデバイス(ハードウェア)の時代ではないのかもしれない。

iPad雑感 [ハードウェア]

 このところiPadを使い続けている。主にWebとTwitterを利用する。このほかメールも読み、シンセサイザーなどの音楽アプリケーションも軽く楽しむ。実際にはアプリのつまみぐいが多い。パソコンと違って起動が速いので、それらをすぐに利用できる点が好印象だ。また終了処理も速く、なんというか、「手離れ」がいい。
 一方で日本語入力はまだまだ改善の余地がある。英語と日本語入力の切り替えすら面倒で、長文を打ちたいとは思わない。日本語入力で明らかなように、iPadは「深く」使いこなすツールではなさそうだ。閲覧向きとでもいえばいいだろうか。アプリもこぶり。ノートパソコンが弁当なら、iPadはスナック菓子だ。
 周知のとおりiPadの国内での反響は上々であり、売り上げの初速はかなりいいらしい。先日も新宿・ヨドバシカメラのiPad売り場へ行ったが、50代くらいの男性たちが入れ替わりやって来て、展示機をいじったり予約販売状況を聞いたり、皮製のケースを物色していた。若者よりも、金回りのいい世代が買っている印象さえある。
 iPadは余計なものが一切ないタブレットコンピューターだ。無線ネットワークの設定さえクリアすれば、けっこう軽快な使い心地を味わえる。しかも操作のすべては指先で行う。アップル社は人気者「iPhone」のウリをうまくなぞってこのコンピューターを作った。この手軽さは、いまどきのどんくさいパソコンを敬遠する人にはウケがいいだろう。iPadであらためてWebブラウズやアプリケーションの楽しさを実感する人も多いかもしれない。
 しかしながらPC/ITの世界は新陳代謝が速い世界。今使っている「環境」が、五年十年先にも変わらずにあることはまずない。内蔵ハードディスクにためたデータを基に作業を行う従来型のパソコンと異なり、iPadでの作業はネットワーク活用がベースとなる(そのおかげで、あの面倒な「インストール」という儀式が不要なのだが)。タブレットコンピューターも、世代交代で早々に変化していくはずだ。
 新陳代謝の底辺を激流のごとく流れているのがネットワーク技術であり、それを利用したサービスやアプリケーションも変化する。iPadが一時的な興味を充足させるツール(スナック菓子)で終わるのか、継続的な実用性を提供し続けられるのか、私は半信半疑で見ている。なにしろ、「革新的」などという言葉の重みがまったくない時代の話である。

iPhone [ハードウェア]

 仕事の関係で必要になったのと、以前から興味をもっていたこともあって「iPhone 3GS」を購入(契約)した。発売当初は、購入者自らがアクティベーションという使用開始の登録作業を行う必要があった。現在はそれがなく、導入の手続きは容易になっている。とはいえ、ネットワーク機器につきもののIDやパスワードによる諸設定は相変わらず面倒くさい。しかも、登録項目によってIDやパスワードが複数あり、ケータイとは勝手が違う。
 数日使ってみて、このツールの便利さがようやく分かってきた。パソコンとほとんど同じことをしているにもかかわらず、だいぶ違った印象を受ける。それはやはりボディーサイズによるところが大きい。手のひらの上でさまざまなアプリケーションを動かす。これはiPodとも違う感じだ。パソコンと大きく異なる点は、指で操作するということ。画面のスクロールや文字入力、拡大・縮小などをすべて人差し指、場合によっては親指も使って行う。画面のインターフェースは、パソコンよりも簡略化されているので、初めのうちは少々とまどう。しかしそれも徐々に慣れてくる。アップルの作法に従えば、できることとできないことがなんとなくわかってくるのだ。私はここ10年ほどのアップルの作法があまり好きではないのだが、残念ながらこれ以上のものはほかに存在しない。指による操作もこなれてきている印象(ただし、反応しないことも多い)。動作も意外に速く、バッテリーの持ちもいい。
 使っていて、ときどき前にも後ろにもいけなくなることがあったり、「切り替え」はあっても「終了」がない点などは気になるが、総じてiPhoneのインターフェースのナビゲーションはうまくいっている。文字や画像のコピー&ペーストもできるようになった。勘のいい人ならすぐに使いこなせるようになるはずだ。ちなみに私は勘が鈍いので、バリバリに使いこなすというところまで至っていない。
 感心したのは、「マップ」というアプリケーション。GPSによる位置情報を基に、現在地から目的地までの経路を示したりする。これがなかなか細かく、階段を上るなどという案内までしてくれる。また、コンパス機能も備えているため方角もかなり正確で、地図が常に北を向く。方向音痴には強い味方になる。
 iPhoneに盛り込まれた多くのアイデア(具現化したイメージ)は、今後このほかのいろいろな機器に応用されていくのだろう。OS、ハード、インターフェース、ネット、アプリ、音楽、映像、ダウンロード販売……。米国のこのメーカーは、これらを固めて着実に新しい足場を構築中だ。悪く言えば、囲い込みを進めているといったところか。これをほかのメーカーが追いかけているが、その差はかなり開いているようにみえる。
タグ:iPhone

iPad [ハードウェア]

 最近、iPadに触れる機会があった。ちょっとした好奇心だが、私は電子書籍リーダーに興味がある。iPadは電子書籍リーダーとしても使えるのがウリの一つ。この場合、まず気になるのはその重さだ。680gという重量は決して軽くない。最近の小型のデジタル一眼レフカメラと同じか、それよりも少々重い。実際に片手で持っていると、徐々に重みを感じるようになる。読書に利用するのなら、両手で持つか、机上に置くようになるだろう。
 両手で持つとはどんなものかといえば、ちょうど、A4判の雑誌を広げずに両手で持つ感じに似ている。雑誌とは異なり、広げないぶんだけなにか違和感がある。しかも画面周囲には「額縁」があるため、ボディー(189.7×242.8mm)よりもさらに小さい。横位置で持ったときに、文庫本を見開きにした程度のサイズなのだ。この点では、デジタルフォトフレームとさほど変わらない。できれば、ボディーと画面サイズがなるべく近いほうが望ましい。
 板状の機器で読書をするのなら、なるべく薄く軽いほうがいい。そしてページをめくる操作は、左右いずれかのボタンで容易に行いたい。iPadのように、タッチパネル式の画面で、紙のページめくりを模倣するのはどうかと思う。余分な動作は読書に不要だ。
 iPadの液晶画面は視野角が広く、小さな文字も見やすい。カラー表示である点が、Amazonの電子書籍リーダー「Kindle」(表示はモノクロ)とは異なる。写真やムービー、Webを見たりするのならば、当然iPadが適している。しかし、文字を読むことを主として考えると、Kindleが採用する反射光方式の「E Ink 電子ペーパー」に分があるのではないだろうか。透過光(バックライト)の液晶での文字表示と、紙と同じ反射光(外光)によるE Inkの文字表示を比べた場合大きな違いがあるように思う。私は、内部照明式の液晶画面は、目に大きな負担をかけると常々考えている。蛍光灯を見るのと変わらず、本当は長時間の使用には向いていないのではないか。まだ実際に見たことはないのだが、その点で反射光方式のE Inkに期待したい。物理的にみても紙の印刷に近く、要するに平面性がある。またE Inkであれば、例えば書類やマニュアル、楽譜といった用途にも向くかもしれない。特に会社で「電子書類リーダー」として使えれば、相当な森林資源の保全につながるはずだ。現在の会社は、コピー書類を膨大に生み出しては廃棄し、森林資源を浪費している。私はコピー紙を捨てる際、いつも心が痛む。会社で用いられる書類はほとんどが消耗品。それらをすべて電子化(PDF)し、リーダーで読めばいい。
 話がそれたが、iPadはキーボードがないノートパソコン、というのが私の第一印象だ。あるいは、大きくなったiPhone。パソコンなので応用範囲が広いところが魅力だが、電子書籍リーダーとして使うには、どこか直接的・直感的でない気がする。
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