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国産の低価格放射線測定器 [ハードウェア]

 ついに国産の低価格の放射線測定器(*)が発売される。エステー株式会社と首都大学東京が共同開発した製品「エアカウンター」だ。シリコンフォトダイオード(半導体)を使用した小型の測定器で、価格は税込み1万5,750円。発売は10月20日予定とのことだ。
 3月11日の原発事故発生以降、国内で売られている放射線測定器の価格は通常の5倍あるいはそれ以上に跳ね上がった。しかしこの危機的な状況において背に腹は代えられず、やむなく高額の製品を買った人が多い。現在でも、中国製が3〜6万円、ウクライナ製が10万円前後、米国設計のシンチレーター+フォトダイオードタイプが5〜7万円ほどで売られている。たぶん、以前の値段はいずれも1〜2万円程度だったはずだ。販売元などの説明は、世界的に放射線測定器の需要が増え、ガイガー管などが不足しているので価格が高騰しているというもの。その真偽はともかく、この状況において、優秀で安価な電子機器の製造を得意とする日本メーカーから低価格の放射線測定器がなぜ発売されないのか、多くの人が疑問に思っていた。
 私はこれまで、3台のガイガーカウンターを使ってきた。最初に友人から借りた中国製「JB4022」は検出値に大きなブレがなく、そこそこ実用的な製品だった(検出値は若干高めに出る)。連休にいわき市に帰省した際にはこれを持って行った。次に自分で購入した中国製「SW83A」は、誤差や検出値の振れ幅が大きいため(三鷹の室内で0.08〜0.29マイクロシーベルト/h)、高線量の場所の判断くらいにしか利用できなかった。たぶん、検出値を割り出すプログラムがおかしいのだろう。これはハズレだった。最近購入したウクライナ製(TERRA P+、型番MKS-05)は誤差が小さく、値も安定している(三鷹の室内で0.09・屋外で0.12マイクロシーベルト/h)。ただし、中国製はもちろん、ウクライナ製も国内販売店の対応には不安が残る。特に初期不良や故障した場合の対応は、一般的な日本製品の場合と異なるので注意が必要だ。
 個人用の放射線測定器はそれほど高精度ではなく、本来は目安程度にしか使えないものだ。ガイガーカウンターはその構造上、検出値に誤差が生じる。その点、シンチレーションタイプやフォトダイオードタイプは計測時間こそ長いものの、比較的安定した性能を備えているようだ。福島原発の現状を考えれば、できるだけ日常における空間線量の変化を判断できるような製品が望まれる。実際に測定器を購入した人は、自分の機器が表示する値の「癖」を覚えながら、計測を行っていることだろう。つまり、中国製の粗悪品であっても、差分を読み取ってなんとか変化を察知できる。私がおすすめなのは、前述のガイガーカウンター「TERRA P+(MKS-05)」または米国設計(中国製造)の線量計「DoseRAE2」だ(実勢価格5万円程度)。MKS-05は空間線量や地表線量を計測するのに適し、DoseRAE2は日常的に携帯し、一定期間に受けた合計の線量を計測するのに向いている。
 日本製の放射線測定器はこれまでも販売されていたが、いずれも12万円以上と高額だった(しかもamazonや楽天などでは扱っておらず、入手しにくい)。事故から4カ月以上経ったが、放射線測定器が必要とされる場面はまだまだ多く、事態はこの先も続く。行政がいまもって正確な情報の公表を行わない以上、市民は自分たちで自らの安全を守っていくしかない。雨樋の下や側溝など、高線量の場所は身近にも存在する。子供が遊ぶ砂地や草地、すべり台の下などはぜひ計っておくべきだ。子供たちが放射性物質を吸引してしまうことは絶対に防がなければならない。
 われわれの関心はいま、呼吸あるいは食品や水から放射性物質を取り込むことによっておきる「内部被曝」に移っている。場所の線量は測れるが、残念ながら個人用の携帯型測定器では食品や水の汚染は計測できない。本来であれば、食品や水などの汚染チェック体制に万全を期したいところだ。食品専用の測定器の全国的かつ早急な普及が望まれる。
 「エアカウンター」の性能のほどは分からない。シンチレーターではなく、半導体による検出方法のため、どれほどの性能や使い勝手を備えているか見極めてから購入を検討すべきだ。検出に10分ほどかかるという情報もTwitter上に流れている。開発においては首都大学東京の放射線安全管理学の福士政広教授が監修したという。放射線などについての基礎知識を掲載した小冊子も付属する。これまでの製品と比べれば、1万5,750円は妥当な価格だと思う(※発売前に9,800円に値下げされた)。比較的線量が高い地域に住み、まだ放射線測定器を持っていない人には入手しやすい製品といえる。ただし私は、安さだけですぐに飛びつかないほうがいいと思っている。日本製の低価格製品の発表があった以上、今後は従来品の価格も下がるだろう。類似の日本製品も出てくるはずだ。のちのち買い直すことがないよう、計測値の精度を含め、利用した人の評判を聞いてから判断したい。

●「エアカウンター」の詳細(プレスリリース):
http://bit.ly/nJHf9y

20110727_aircounter.png
エステー株式会社の「エアカウンター」。放射線測定器を購入してまず最初に行うのは、ビニール袋に入れること(機器自体を汚染しないようにするため)

7月29日追記:
今後は、放射線検出器「シンチレックス」搭載の製品も期待できる
http://on.wsj.com/pYRKCc

10月15日修正:
「放射線測定器」と「ガイガーカウンター」「線量計」の用語の使い分けをした

10月21日追記:
福島で作られたガイガーカウンターについて
http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-927.html

2012年7月25日追記:
私の友人3人が「エアカウンター S」を購入して使用しはじめた。それぞれに計測結果を聞くと、安定した信頼できる検出値を表示するようだ(じゃっかん、外部ノイズの影響を受ける)。ただし、計測値が少し低めではないか、という意見もある。
http://www.st-c.co.jp/air-counter/products_s/cara.html

iPhoneおよびiPadに接続して使用する「ポケットガイガー」(税込価格3,700円):
http://www.radiation-watch.org/p/blog-page.html
FRISKのケースを利用する(加工を代行する業者もあり)。計測精度に優れ、プライスパフォーマンスが非常に高い。計測には10分以上を要する
「ポケットガイガー Type2」(税込価格5,250円・組み立て、電池不要)http://www.radiation-watch.org/p/blog-page.html

*放射線測定器には、ガイガー管を使った「ガイガーカウンター」と、シンチレーターを使った「シンチレーションカウンター」、シンチレーターとフォトダイオードなどを組み合わせたもの、フォトダイオードを使ったものなどがある。DoseRAE2などは、人体が受ける放射線の合計量をモニタリングする「線量計」の分類に入る(ただし、空間線量を計測する用途にも使える)。






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