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テレビ局の取材 [テレビ]

 先日、会社でテレビ局の取材を受けた。私が昨年11月に刊行した書籍の著者がNHK教育テレビの番組から密着取材の要請を受け、その中で、出版社での打ち合わせ風景を収録させてもらいたいという連絡が暮れにあった。著者のSさんは今年英国の大学院を卒業した青年で、ソーシャルネットワークのセミナーやグラフィック関連など、いろいろな仕事に積極的に携わっている。IT系書籍のライターを探していて偶然彼のブログを読んだのが、執筆を依頼するきっかけだった。そのSさんの活動と人脈の広げ方が、NHKの目にとまったらしい。

 私はテレビ局の取材を受けるのは初めてだったので、緊張半分、興味半分といった心持ちだった。実際には、収録は思っていたほど大げさなものではなかった。やって来たのは、NHK名古屋放送局の若い男性ディレクターとカメラマン、録音担当(女性)の3人。ディレクターの服装は普段着でNHKのイメージからは遠く、長身のうえずいぶん若い。後で年齢を聞くと、まだ24歳だという。

 事前に企画書だけもらっていたが、取材班を会議室に案内すると、簡単な説明の後、それではどうぞ打ち合わせを始めてください、と言ってカメラが回り出した(テープではないかもしれないが)。面食らった状態で、Sさんと続刊の企画などを少々ぎこちなく話し合う。注文やダメだしなどは一切なく、打ち合わせとインタビューの収録は40分ほどで終わった。こちらは、編集することを考慮して話そうと気を遣っていたが、どうやらそれほどの構成ではないらしい。Sさんの活動のごく一部として表現されるのだろう。

 よく言われることだが、テレビの取材は収録時間が長い割には、放映されるのはごくわずかだ。テレビはマスメディアであり、その内容は万人向けとして制作され、必然的に、発信するメッセージは絞られる。いうなれば最大公約数の伝達手法だ。一方で、近年注目されているUstreamやニコ生は、リアルタイムのうえに形式的・時間的な制約がなく、ジャンルやテーマによってはかなり面白い。最近は画質や音質が向上しており、視聴者はまだ少ないにせよ、放送メディアの軸は今後ネットワークに移る気配を強く感じる。

 民放テレビ局は、制作費の面で、またメディアとしての存立基盤の面でも厳しい状況にある。他の業種同様にリストラや再編が進行し、広告収入は減少傾向と報道されている。その点で、受信料を取っているNHKは基盤がいまだ強く、番組内容も多彩だ。ちなみに、NHK教育のほかにも、テレビ局やラジオ局からSさんへの出演依頼があったのだが、それらの局は皆一様に放送までの時間が短い(切り口は多少異なるが、NHK教育は放映まで約1カ月)。アポイントを取りたいという連絡が月曜日にあって、金曜日に放送といった具合だ。端から見るとこれは速報性重視というよりも、単に時間に追いまくられているにすぎないように映る。速報性ではネットワークメディアに太刀打ちできないのはあきらかだ。

 私はBS-hiのように、良質の番組を提供するチャンネルを評価する。テレビのメディアとしての次のモデルを示す役割は、新しい動向の掘り下げが民報よりも深いNHKが担うのかもしれない。取材が終わって、そんなことを考えた。さて、短いとはいえ、どのように編集・放送されるのだろうか。Sさんはどう取り上げられるのか、興味津々だ。そして、自分がどういう人間として画面に映し出されるのか、それも気になる。

追記:
放送された番組を見ると、会社での打ち合わせの場面はなかった。面白みがないせいもあるだろうが、番組の企画主旨とは少々ズレており、不要だったようだ。取材して使わない、というのはよくある話なのでもしやと思ったが、一緒に放送を見た家族とため息をついた。
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刑事コロンボ [テレビ]

 先週から見始めたのだが、NHK BSハイビジョンで「刑事コロンボ」の旧シリーズを放送している。推理小説では、最初に犯行現場を読者に見せて、そこから犯人解明まで書き進む手法を「倒叙物」と呼ぶらしい。コロンボは全話この倒叙形式で描かれていてワンパターンなのだが、その追い込み方が面白い。ネタは殺人にもかかわらず、視聴者は毎回安心して番組を見ることができる。もちろん、コロンボ警部という登場人物の味が最大の魅力だ。
 私は小・中学校時代、コロンボを父親と毎週見ていた。その懐かしさもあるが、いま見ると、この番組が放映されていた時代(1970年代)の、現在から思えばのんびりした空気がじんわりとよみがえってくる。このテレビドラマ自体にも近年のテレビや映画にただよう重苦しい雰囲気や過激さ、複雑さはない。ときに、自動発信電話などの初期の電子機器が犯行に関係したりして、警部が「すごいもんですなあ、電子工学なんでしょう、こういうのは」などと言う場面もある。また当時の、自動制御=コンピューターというような解釈もほほえましい。漂うのどかさは、いまの言葉で表現するならさながら「アナログ」とでもいうのだろう。それが40年後のいまにあっては、「デジタル」一色になり、どうにもせわしない世の中になってしまった。
 便利を追い求める末に、自ら追い立てられるような日々を過ごすわれわれの生活を俯瞰してみると、「パンドラの箱」を開けてしまったのではないかと思えてくる。9.11のテロ行為により人類はパンドラの箱を開けた、と評した人がいたが、箱を開けたのはもっとずっと前かもしれない。箱の中から浮き出てきたのは、市民を「消費者」などと呼ぶ風潮。あるいは、市民自体がその欲望を充足させることに目覚めた時代。
 またそれとは別にさまざまなテクノロジーが箱から現れ、市民の生活に入り込んできた。パソコン、Windows、インターネット、ケータイ、メール、iPhone、Twitter……。災いと言ったら語弊があるが、次から次に現れる出し物は便利な半面、どれもどこか刹那的なせわしなさを伴う。倒叙物とは異なり、結末どころか行く先がまったくわからない筋運びのテレビ番組に皆が巻き込まれていくかのようだ。もちろん、刑事コロンボの中にも、現代のデジタル社会に通じる萌芽はある。現在のテクノロジーのほとんどは米国発であるから。ただしそれらはただの道具にすぎず、人と技術の間に適度な距離があった。
 余談だが、ヘンリー・マンシーニによるコロンボのテーマ曲は名曲で、耳に残る。口笛のようなメロディーを奏でるのはARP(アープ=米国製のアナログシンセサイザー)だろうか。1970年代のシンセサイザーは本当に音がよかった。あの音はすでにCDやビデオの中にしか存在しない。現代のデジタル楽器は、技術的にみて1970年代のものよりも相当高度なのだが、昔のアナログ楽器の魅力に遠く及ばず。これは暗示的な話だ。
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大河ドラマ「龍馬伝」 [テレビ]

 小学生のころの私は、夏休みや冬休みになると祖父母の家に預けられることが多かった。当時若かった両親は見ていなかったが、祖父母は日曜の夜、欠かさず白黒テレビでNHKの大河ドラマを見ていた。寝床でそれを一緒に見た記憶があり、そのせいで私も大河ドラマを見るくせがついていたのかもしれない。20代はテレビから離れていたが、その後は毎年見続けている。そういえばその昔NHKの定番ドラマシリーズに、「銀河テレビ小説」という番組があった。いま思うと、なんとロマンチックなタイトルだったのだろう。テレビに夢があった時代。きらめく星空と流れ星のオープニングが記憶に残っている。

 話を戻すと、今年の大河ドラマは「龍馬伝」だ。第1回から見ているが、今回は脚本や演出がいいように思う。第7回「遙かなるヌーヨーカ」では、龍馬が江戸での剣術修行から土佐に戻ったところから話が始まるが、複数の筋がテンポよくパラレルに進み、それぞれのエピソードに納得できる落としどころがついていた。これに編み込むように描かれた家族像。緩さと緊張。時間の使い方がうまい。私はこのような並列の筋立てが好きだ。例えば、小学5年生のときに見た黒澤明の「どですかでん」の強烈な印象はいまだに頭に焼きついている。時間をうまく使い、興味深いエピソードが並行に進んで帰結し、最後に残るひとすじの余韻。あのような彩りの映画を作れる監督はもう現れないのだろうか。

 今夜の龍馬伝では、父・八平役の児玉清の演技に引き込まれた。ようやく芽が出てきた息子の将来に想いをはせる老父のまなざし。大河ドラマシリーズをつらぬくテーマは家族だと私は思う。坂本龍馬という人物の資質をつくったのはまさに彼の家族環境だったと想像する。その点で大河ドラマという番組に合う部分が多い。また本職の役者とは目力が違うが、龍馬に大きな影響を与えた河田小龍役のリリー・フランキーのひょうひょうとした役作りも生きていた。本作においては適役だったと思う。そして、強烈な攘夷意識に染まっていく武市半平太。これで姉・乙女の存在感が増せば、より厚みが出ると思うのだが、本作は家族全体に力点を置いているため、乙女は司馬遼太郎の小説ほどには焦点を当てられていない。

 龍馬伝は30pのプログレッシブカメラで撮影された。ハイビジョンで見ると、その映像の質感と色には深みがあり、映画的だ。これと同時にセットにもだいぶ気が配られている。これまでの大河ドラマの場合、後半に息切れし、ロケや登場人物が減り、終盤に近づくにつれて回想シーンが増え、失速してしまうことが多いが、いまの調子で最後までいってくれることを願う。
タグ:龍馬伝
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