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SHOHEIの肖像画 SHOHEI Exhibition -Layered- [ART]

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或る日本人の肖像

 原宿のCarhartt Store Tokyoという店で開かれたSHOHEIの原画展を見た。ボールペンで描かれた線画。米国のワークウェアブランドであるCarharttの広告用作品と過去作品をミックスした展示となっている。モチーフは主に人物だ。フルフェイスの防塵マスクとタイベック姿の男(或る日本人の肖像)、凶悪そうな警官(巡査A)、若い男女、黒人、車イスの青年など。作品のサイズはB4〜A3ほどだろうか、ボールペンとマジックを使い、モノクロで描かれている。Webでその制作過程を見ることができるが、彼は軽い下書きをしただけで、このリアルな絵を描き上げる。これには驚く。
 SHOHEIは以前、大友克洋氏の子息ということでネットで紹介され、私はそれでこの作家を知った。そのような紹介のされ方をすると、どうしても希代の漫画家の遺伝子を見いだしがちになる。それはやむを得ないことだろう。たしかにその作品からは、若いころの大友克洋氏と共通する感覚を感じる。しかし見るべきは彼の精神であり、作家としての独自性だ。緻密なボールペン画には、非常に鋭い切れ味をもつなにかが含まれている。「或る日本人の肖像」を見たとき、私はその切れ味に触れた。いまの日本の負の側面を静寂によって表した作品だと思った。静止画となった現在の日本の断面。
 この作家はボールペン画とひとくちにいえない技法を備えている。一見すると、印刷物あるいは版画のようでもある。それは、高度に緻密なハッチングによるものだろう。中世ヨーロッパの版画に匹敵する精密なハッチングで、調子と質感、そして気配を表している。卓越したデッサン力だ。見る者はまずそのテクニックに目を奪われる。
 ドローイング作品においてまず重要なのは「気配」だろう。これを感じさせる作家は少ない。私は彼の絵に新しい気配が息づくのを感じた。現在を切り取る、古い言葉でいえば時代を切り取る、SHOHEIのような作家は日本に久しく不在だった。過去の作品から見ていくと、題材が変化し、過激なモチーフからいまの肖像画に至っている(過激さはかたちを変えていまの作品に脈打つ)。これらの肖像画は現在の「気配」を表している点で出色といっていい。個展はオーストラリアやメキシコでも開かれ、作品はすでに日本を飛び越えた。世界に通じる新しい肖像画だ。

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SHOHEI Exhibition -Layered- at Carhartt Store Tokyo 2012.11.17-11.25

※過去作品や最新情報は、「白痴ランド」(http://www.hakuchi.jp/)に掲載されている。
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