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大飯原発の再稼働 [原発]

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 悪い夢でもみているのかと思う。面の皮の厚いタヌキの親分みたいなのがテレビにぬっと現れて、「原発を再起動します」などと言っている。昨夜、仕事をきりあげて同僚のM君と二人で首相官邸前にかけつけたが、再稼働への抗議行動はすでに終わっていた。警官だけが残った官邸前の路上で、1万1,000人の人間の怒りと熱気がまだその場に残っているのを感じた。

 5月5日に国内の全原発が停止して42日、このまま原子力発電が停止していることはないだろう、「経済」の亡者の原発推進派がおとなしくしているはずはない、と予測はしていたが、なんの議論も折衝もないまま、一部の民主党議員と責任逃れのおおい町町長、西川福井県知事の形式的な申し送りによっていとも簡単に再稼働を決めてしまった。あり得ない話である。

 福島原発事故の原因究明も進まず、放射性物質の拡散・漏洩は続き、避難した市民8万6,000人はいまだ不安定な生活を送り、さまざまなかたちで汚染が国中に広まる中、なんら旧来と変わらぬ態勢のまま福井の突端にある原発が再び動き出す。現在、日本列島は地震の活動期に入っている。この島国のそこらじゅうで毎日大地が揺れている。自然は「想定外」となって、再び人間社会を襲うだろう。野田総理が口にする「国民の生活を守る」という言葉がむなしい。

 関西電力は再起動宣言の直後に大飯原発の準備作業を始動した。とうの昔に話は決まっていたことがわかる。すべては猿芝居。すでに結論ありきの政治なのだ。「暫定」やら「容認」などという言葉をあみ出し、市民を軽んじたそれはすでに政治ではない。

 野田総理は、最終責任は私がとると言い放った。福島第一原発の事故で明らかなように、いざ原子力事故が起きたら、広大な地域に深刻な放射能汚染が広がる。一人の人間の「責任」でなにができるというのか。これはすでに多くの市民にとって自明なことだ。まして福島の事故ではだれも責任をとってはいない。この点で総理の言説はまったく破綻している。増税の件も併せて、一部の民主党議員からは「狂っている」という言葉も出ていると聞く。狂った脳ほど手に負えないものはない。狂っているのか、真実を見極める能力が欠落しているのか。

 大手メディアも3.11からなにも変わっていないようだ。昨夜、1万1,000人の市民が首相官邸を取り囲んだ事実をどのメディアもまったく報道していない。米国でホワイトハウスを1万1,000人の市民が取り囲んだら同国のメディアは黙ってはいないだろう。おそらく、世界中にニュースが広まるはずだ。いまの日本の大手メディアは、記者クラブの座席でノートパソコンのキーをパチパチたたいて、政府のいうことを伝えるだけの広告宣伝会社になりさがった。監視者が消え、権力が野放しになる。そら恐ろしい時代になったものだ。昨夜の市民の行動を知るのは、TwitterやFacebookの利用者などに限られた。

 大飯原発(大飯発電所)の位置を地図で確認してほしい。海に面した大島半島の突端に造られており、そこに至る道は一本道である。高い防潮堤も、免震棟やオフサイトセンターも、ベント用のフィルター装置も用意されておらず、福島第一原発よりも無防備だ。この地域で災害が起きれば、津波あるいは土砂崩れで道は絶たれ、発電所は孤立するだろう。その後の事態は容易に想像できる。

 福島の原発事故はいくつかの不運が重なってたまたま起きてしまったと思ってはいないだろうか。それは間違いだ。今回の事故以前にも全電源喪失などの重大な事故はいくたびか起きており、東電によってそれらが隠されていたにすぎない。東電以外でも、各地の原発、あるいは各国の原発で、放射能漏れなどの重大事故は隠されてきた。配管の溶接ひとつとっても安全は保証されない(大飯原発の場合は冷却用の細管か)。原発はそれほどに危うい設備なのである。安全と事故の尾根の上をときどき後者に滑り落ちながら、ぎこちなく歩いているのが原発という施設なのだ。日本列島は東が汚染されてしまった。次は西、となればもはや進む先はない。

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大飯原発事故を想定した放射能汚染シミュレーション(報道ステーション制作)

6月15日の首相官邸前抗議行動の記録動画:
http://kingo999.blog.fc2.com/blog-entry-715.html

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海から見た大飯原発(安冨歩氏撮影)

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