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アントワープ王立美術館コレクション展 [美術]

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 東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の「アントワープ王立美術館コレクション展」を見る。サブタイトルは「アンソールからマグリットへ ベルギー近代美術の殿堂」。会期は10月3日まで。
 最初の部屋は「第一章 アカデミズム、外交主義、印象主義」としてカテゴライズされた作品の展示。ルイ・アルタンの油彩「海景」は、夕暮れの空と海を描いた。ターナーに共通する大気を感じる。この感覚は、ヨーロッパ人特有のものかもしれない。淡い青の空と、夕陽に照らされた雲と海。色彩が極めて美しい。この淡い水色とオレンジは、現代の絵の具では出せないのではないかと思った。今の絵の具は混ぜるとすぐに濁る。顔料の違いか。エヴェール・ラロックの油彩「朝」(1895)。丈の長い草原の手前に娘、奥に家屋が描かれている。左側はグレーに近い空。厚塗りのタッチで色調を整えている。色の幅と、使っている個々の色がよく、セザンヌの初期に通じる。屋根と空の際、白い壁の仕事がいい。アンリ・ヴァン・デ・ベルデの「洗濯をする女」(1887)。斜めのハッチングによるタッチ。粗さはあるが、色調は整っている。色彩の幅は広くないが、同時代のフランスの画家と同等の仕事をしている。この人はのちに建築家になったとのことで、構造がしっかりしていた。調子もよく見ている。リク・ワウテルスの「白衣の女」(1915)。椅子に腰掛けた女の肖像画。この画家はセザンヌの影響を受けたという。色調の作り方と構造の決め方がそれを思わせる(この仕事以上の領域に踏み込むのは相当たいへんだ)。
 「第二章 象徴主義とプリミティヴィスム」の部屋で印象深かったのは、レオン・スピリアールトの水彩画。モノトーンに近く、孤独で、哲学的な映画表現のような世界。「砂丘の少女たち」、「自画像」2点、「海辺の女」。ベルギーの沿岸の町オステンド出身とのこと。その町との関係も想像させる。
 次に、「第三章 ポスト・キュビスム:フランドル表現主義と抽象芸術」。私はいまだにキュビズムの定義がわからない。立体的な構造を基にした画風なのか。それにしては皆、構造が浅く表面的すぎる。ピカソでさえも。構造を考えるとき、水平と垂直、そして深さ、これらの要素のほうがよほど大切だ。また、力学を組み込む場合、極めて高度なバランス感覚が必要となる。本展に出品されたラマーの「ポール=グスターブ・ファン・ヘックの肖像」(1920)は、セザンヌの構造と力学を流用している。ただし、単調。同じく彼の「ペタンク」は、いわゆるキュビズム的な構造を基にしている。色調はほぼモノトーンに近い。これは私にもわかる。セザンヌ的な構造や力学を追究するのは可能だが、そこに色彩を伴うことは遙かに難しい仕事なのだ。色彩と構造が融合して初めて画家の仕事といえる。
 展覧会の最後を締めくくるのは「第4章 シュルレアリスム」のルネ・マグリット。「9月16日」(1956)は、一本の木の中央に月が描かれた作品。木と夜の風景は緻密なタッチで粛々と表現されている。静寂とイメージの反転。この反転による衝撃が現在の美術に通じているのだろうか。

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