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Oxygen [芸術]

 Kenji Taki Galleryの村岡三郎展を再び見る。訪れるのはこれで3度目。
 白く塗られた6本の酸素ボンベによる作品「Oxygen」。以前も紹介したが、その存在感が強く印象に残る。感というよりも、むき出しの「存在」そのものだ。人の高さほどのボンベの重量感がそのまま存在につながる。静寂の中にたたずむ6本は高さや形状がいずれも微妙に異なり、このわずかな違いが生物の多様性を感じさせた。それぞれには、(人間が名付けた)生物の名前が刻印されている。
 Oxygenは最初に広島で発表されたとのこと。原子爆弾が投下された街で展示されるのを前提に作られた作品。それを思うと、名前が刻印された生物たちは、圧倒的な暴力によって消し去られたという新たな視点が自分の中に生まれる。Oxygenを展示した美術館のキュレーターは語ったという。原子爆弾がそれまでの兵器と異なるのは、人間だけでなく、それ以外のあらゆる生物を抹消する力を持ったということだ——と。
 生物に必要な酸素を封入したボンベは、墓標になり、また救いにもなる。あるいは、生物を考える起点になり得る。同時に、傲慢な人間の姿も浮かび上がってくる。しかし政治的なメッセージではない。日常の中に立ち現れる新しい視点と感動。衝撃。これこそが、現代美術が持ち、われわれに作用する大きな特性だろう。
 私は引き寄せられるように、Oxygenを見た。白い壁とグレーの床のギャラリーにたたずむ。6本のオブジェとギャラリーの匂い、静けさ。作品とともにあるゆっくりと流れる時間に、なぜか安らぎを覚えた。

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Kenji Taki Gallery・村岡三郎展 2010.9.3 - 10.9 TOKYO
http://www.kenjitaki.com/muraoka10tokyo/muraoka10t_01.html
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