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御巣鷹山の写真 [世界]

 25年前の夏のある日、最初に就職した航空測量の会社で1枚の立体写真を見た。朝、ライトテーブルが置かれた部屋で上司が、立体視のスコープをしばらくのぞいていた後、これを見てみなさいと言う。ライトテーブルにセットされていたのは中判サイズのポジフィルム。いわれるままに両目をやると、それは山を真上から撮影した航空写真だった。急峻な山の尾根とうっすら流れる煙がリアルに浮かび上がってくる。尾根の突端付近にある緑の木々が広い範囲でなにかがぶつかったように削られ、現れた山肌に白い破片や残骸のようなものが散乱しており、上空からの俯瞰撮影にもかかわらず生々しい空気が捉えられていた。
 それは御巣鷹山の上空から撮った日航機墜落現場の発見直後の写真だった。飛行機はまったく原形をとどめておらず、言われなければ航空機事故の現場には見えない。わずかに翼の一部のようなものが分かる程度。なぎ倒された木々と露出した地肌、そして燃え尽きた後のように流れる白い煙がただごとではない状況を表していた。そのときは悲惨さの実感がさほどなかったのだが、その後、事故の詳細を知るにつれ、あのポジフィルムを鮮明に思い出す。そして、多くの人々が奥深い山の尾根に激突し、一瞬にして亡くなったことを想像する。なにが起きているのか分からない、恐怖の連続。制御不能になったジャンボジェット機が最後にたどり着いた場所。毎年この時期、日航機墜落事故の記事を読むたびに、あの尾根と白い煙の画像が蘇ってくる。
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