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アルフォンス・ミュシャ展 [美術]

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 三鷹市美術ギャラリーで開催中のアルフォンス・ミュシャ展に行く。夕方の館内は、同ギャラリーとしては珍しく混雑していた。来館者のうち、半分ほどは若い女性だ。物販コーナーには行列ができ、最後尾を示す看板を持つ係員がいたことに驚く。
 アール・ヌーボーにおける代表的な作家としてのミュシャの絵は書籍などで見ていた。あらためてその作品をまとめて見ると、緻密かつ大胆な装飾紋様や、現代のマンガやイラストレーションの祖ともいえるタッチと構図が新鮮だった。すでに1890年代には、現代に通じる表現力を持った作家が存在していたことになる(あるいは、後世の作家がミュシャを目指した)。
 今回の展覧会は出品数が多く、彼が広告やポスター、パネル、挿絵、壁画、油彩画(「少女の像」など)と、精力的に活動していたことを知る。ポスターや広告作品における装飾の優雅さと独自性は周知のとおり。彼が持つ、装飾された人物画の資質は天性のものだ。一方で、油彩の色彩、モノクロリトグラフの宗教画に表れたデッサン力も興味深い。彼が表現した世界がスラブ民族の文化や歴史に根ざしたものであるこを示す作品も展示され、装飾や女性はもとより、特に背景の空間表現に宗教的で幻想的なものを感じた。
 それにしても、ミュシャはどうしてこれほど若い女性たちに好かれているのだろう。現在では、アール・ヌーボーのような装飾は存在しない。一般的な服飾や書籍、電化製品のデザイン、建築においても、機能とコストを優先し装飾は極力排除する傾向にある。その半面、装飾的な素材集が密かに売れ続けていたり、「デコ」と呼ばれる趣向があることも事実だ。自分の住居を見回すと、装飾があるのはふすまと布団、食器くらいなもの。生活における装飾はゆとりや楽しさであり、豊かさだ。ミュシャの絵には、コンクリートとガラス、ビニールに囲まれた現代では忘れられてしまった「夢想」があるのかもしれない。

アルフォンス・ミュシャ展は7月4日終了
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コメント 2

Sanchai

残念!子連れで行きたかったです。
by Sanchai (2010-07-06 00:35) 

yotaka

私もしばらく忘れていました。市内の小学校では授業で観覧したところもあったようです。
by yotaka (2010-07-06 10:58) 

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