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ハエトリグモの質問 [生活]

 1匹のハエトリグモが畳の上に降りてじっとこちらを見ている。先日、洗面台の蛍光灯の近くを元気に歩き回っていたクモだ。この春にでも生まれたうちの1匹だろう。しかし今日はあまり動かない。顔を近づけて話を聞くと、こういうことだった。
 獲物を得るために蛍光灯の周りに数日待機していたが、小バエ1匹やってこず。仕方なくいろいろ部屋の中を移動して獲物を待ってみたものの、収穫はゼロ。親からは、ここで生きるのはたいへんだとは聞いていたが、生まれてこの方この家で虫を見たことがない。腹が減って仕方がないとのこと。それで、その理由を知りたいのだという。
 三鷹では以前あった緑地や林、畑が減り、道や宅地ばかりが増えて、虫が激減していること、最近の家はサッシで密閉されてしまっているので虫が入ってきにくいことなどを説明した。彼だか彼女だかわからないが、そのクモは私の話をときおり首を傾けながらじっと聞いていた。ただしどうにも納得できない様子でやはりじっとしている。
 それはそうだろう。さあ一生懸命生きるぞと飛び出た世の中が、人間の都合で自分の存在を否定するような状況に変わり果てていたのだから。私はその生態を知らないが、ハエトリグモだって人間と共存するように進化してきたのだろう。人間の家に一緒に住み着いて、そこにやってくる虫たちを捕獲し、生命をつないできたに違いない。
 申し訳ないので、部屋の窓を全開にし、少しでも虫が入ってくるようにしてみた。しかし入ってきたのは、クルマの騒音と排気ガスだけだった。
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