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オルセー美術館展2010 [美術]

 雨の六本木・国立新美術館。再びオルセー美術館展に行く。先日飛ばした作品をあらためて見て回る。私はモネがよかった。「日傘の女」と「睡蓮の池・緑のハーモニー」。「日傘の女」は高校の国語の教科書の口絵に載っていて、私は授業中ずっとそれを見ていたことを思い出す。モネの眼は色彩の効果をよく知っている。彼の視覚は人並み外れたものだ。ドガの眼は広角レンズをつけた一眼レフカメラのよう。スーラがたくさん来ていたが、私は点描の絵画は好きではない。光学や色彩学などの科学的な知識を応用したとのことだが、絵画としてどうも退屈。編み物でも見るかのようだ。
 セザンヌの「サント・ヴィクトワール山」は3mくらいの距離から見ると、驚くほどの奥行きが立ち現れてくる。これは、いまどきの3Dどころではない。頭の奥のほうで見る絵画。この画家のそれぞれの絵には、鑑賞に適した位置がある。試みの成果を見ることができるポジション。「ギュスターブ・ジェフロワ」も同様の立体感だった。遠近法などという小手先の技術は不要だということがだれでも理解できる。
 1800年代後半のフランスで描かれた油彩画は、絵の具の発色がいい。フランスの土地で採った顔料でつくられた絵の具なのだろう。言い訳になるが、いまの日本製の油絵の具ではあの色彩は出ない。土の色、果物の色、壁の色。それらを現代の絵の具で再現しようとしても必ず濁ってしまう。もっとも、欧州の色彩は日本には存在しないが。
 ロートレックの絵には彼の人生が投影されている。「赤毛の女」の白い背中。女たちの顔と服。この画家にとって、女は特別な存在だったのだろう。ゴーギャンはタッチこそ違えど、どこかゴッホに似ている。しかし装飾的だ。絵画構造はゴッホにより多くあり、ゴーギャンは構造から逃げている。
 今回、ピカソの静物画が1点来ていたが、この絵の前で足を止める来館者は少なかった。多くの人が集まって見ていたのは、ゴッホの「星降る夜」。日本人はロマンチストだ。ピカソの天才力の効力はそろそろ薄まってきたもよう。簡単に絵を描きすぎだ、と言いたい。
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