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望月厚介氏の黒 [ART]

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 ぎゃらりー由芽で望月厚介展を見る。作家本人とも話をすることができた。紙にシルクスクリーンの作品と、ボードにシルクのインクをペイントした作品。タイトルは「Appearance・Disappearance」。すべての作品で、黒の表現が印象に残った。
 シルクスクリーンでは画面の半分から9割近くが黒で占められ、その背後に赤や黄、青が見える。シルクスクリーン用インクの隠蔽力は強い。その物質感はもしかしたら油絵の具以上かもしれない。作家は黒インクを何度か重ねることでさらに深い黒の濃さを生み出していた。また、地ともいえるような赤や青などの色にはテクスチャーを表すようなイメージがあり、なんらかのマチエールを示している。フィルムによる刷版はこの色のイメージの1版だけだという。黒の部分はベタ版であり、そこではインクをのせてスキージー(刷るときに使う道具)の加減でグラデーションをつくるように刷っているとのこと。イメージを静かに想起させる黒。現れることと引き込まれること。
 ボードの作品は、やはり黒のインクをかなり塗り重ねている。そして、削られた部分からわずかに下地の色(赤や青や黄色)が見える。黒を黒として成立させるには、それ以外の色による下地が必要なのだ。いうなれば、スミ1色ではなく、CMYKの掛け合わせのようなもの。ごつごつしたマチエールに線の溝が等間隔で引かれている。フランク・ステラのブラックシリーズを思い出した。しかし、あのミニマルでアメリカ的な質感とは異なる。石に近いような黒。
 おせっかいで軽はずみな光に満ちた現代において、漆黒の闇のような黒は希有だ。黒が表すもの。想像すること。作家と黒についてしばらく話をした。黒への強い希求。やってみたいとは思うのだが、私には手が出ない領域だけに、興味深い仕事だった。
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