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iPad [ハードウェア]

 先日、アップル社が新製品「iPad」を発表した。3月に発売する予定だという。液晶パネル状のiPadは要するに、大きくなったiPhoneだ。大きくなれば、必然的にノートパソコンに近づく。通話機能はないが無線通信機能を備え、Web、メール、写真、アプリケーション、外付けキーボードなどが利用できる点では、ノートパソコンと同等だ。しかし、それでは大して存在価値がないようにも思える。ポイントは、同機のボディが板状であることだろう。これにより、最近注目を集めている「電子書籍」のリーダーとして利用できる。電子書籍リーダーとしてはすでにAmazonが「キンドル」を販売しているが、iPadはその対抗馬になると予想され、iPodとiTunesによる音楽配信で成功した手法が電子出版にも適用できるのではないかと期待されている。
 話は飛ぶが、私はここ数年ほとんど雑誌を買っていない。購入したのはたぶん5冊以下だろう。興味があるものごとについての情報を得たいとき、まっ先に向かうのはパソコンであり、つまるところWebだ。雑誌記事程度の知識であれば、Webで事足りると感じている(好奇心がしぼんでいることも大きな要因だが)。深く掘り下げて知りたいことがあったときや、自分にとって大切な分野の場合は、雑誌ではなく書籍を買う。また、大手書店に行って買うのはめっきり減り、もっぱらAmazonに注文する。近ごろは、書店で目的の本を探すのが面倒くさくなった。急がないときは、近所の知り合いの書店に頼む。
 雑誌記事程度と書いたが、雑誌でも面白い話や実用的な情報はいまだあるだろう。しかし読み終わると、すぐに資源ゴミに変わるのが雑誌のいただけない点だ。いまどき、保存しておきたいと思わせる雑誌は少ない。同時に、我が家に雑誌を保管しておくスペースはすでになく、定期的な購読はもはや無理。手軽さが雑誌の長所であり、短所でもある。現在は、その長所が重宝がられる時代ではなくなった。
 さてこの先、電子書籍リーダーで電子雑誌や電子書籍を購入して読むだろうかと考える。たとえば雑誌や新聞が電子ブック形式になれば、たしかに無駄な古紙を生まなくて済む。興味本位で2、3冊は読んでみたい気がするのは確かだ(電子書籍の単位は「個」か?)。'90年代、マルチメディアと称して、百科事典や図鑑、文学作品などさまざまなコンテンツがCD-ROMで発売された。しかしいずれも普及せず、私も天文図鑑など2、3枚しか利用しなかった覚えがある。
 販売部数の下降が止まらない雑誌。それを電子化して配信する構想を練っている編集部もすでにあるだろう。また書籍も同様に、これまでのコンテンツをデジタル化して販売できる。しかしながら、電子書籍独自の特徴がなければ、人々の関心を引くことは難しい。携帯電話はそのサイズと手軽さが万人に受け入れられた。
 電子書籍リーダーの構想は10年ほど前からあり、無料の文学作品ライブラリー「青空文庫」やデジタルマンガなどの試みがすでに行われてきた。いまだ盛り上がらないこの分野に、アップル社が音楽配信のノウハウを基に参入するのは確実といえる。すでに思いもかけない秘策を考え出し、根回しをしているかもしれない。それが成功したとき、取次や書店にとっては逆風となるだろう。とはいえ、電子書籍配信は音楽配信のときほど容易には行かないと思うのだ。世界中の人々が等しく聴ける音楽と異なり、本には言語の壁がある。また、国内では取次などが存在し解決すべき課題は多い。
 一方、出版社にとって電子書籍配信はひとつのチャンスではある。機能不全を起こしている取次や再販制度を飛び越えて、ダイレクトに読者に商品を届けることができるからだ。場合によっては、気に入った作品を読者が注文し、オンデマンド印刷で実際の本として販売するといったことも行われる可能性がある。このほか、新聞社はついにデジタル新聞の有料化が実現する日が来ると見込んでいるかもしれない。
 読者にとっても利点はある。出版社側がサンプルデータを用意すれば、「立ち読み」ができる。「古紙」の処分を行わずに済む。本の検索がいまよりも容易になる。部屋のスペースを取らない。流通を通さないぶん、本の値段が下がる。
 徒然に書いたが、電子書籍のよしあしをいろいろ考えるほど、紙の本が大切に思えてくる。デジタルデータにはじき飛ばされるほど、本は弱いものではない。その本のよさや強さを、取次や再販制度、あるいは出版業界全体が生かしきれていない気がするのだ。アップル社は、そこを突いてくるだろう。iPadはその先兵だ。
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