たてもの [建築]
建築家の友人が設計した保育園を見学に、戸塚に行った。三鷹駅から戸塚駅までは、新宿経由で1時間少々。戸塚駅は初めて利用したが、駅の周囲がすべて工事中で、バスターミナルなどがどこにあるのかまるで分からない状況。しかし混雑していても、都心と違って人と人がぶつかるようなことはない。
できたばかりの保育園は、冬の日差しの中にたたずんでいた。北側には低層の老人ホーム、西側に芝地と梅の木、林があり、ゆったりとしたいい環境だ。日ごろは高いビルが林立する場所にいる時間が長いせいか、目線の低い建物に出会うとそれだけで安心する。幼児のための建物なので当たり前なのだが、単に目線が低いだけではなく、いい具合に肩の力が抜けている。これは友人の資質によるところが大きい。
外観を眺めると、周囲に植えられた木と共存するように設計されていることがわかる。木に沿って、外壁と屋根がくぼんでいた。中に入ると、1階は落ち着いた雰囲気。白い手すりの階段が目に入る。2階は採光が十分の、明るく見通しのいい空間。建具や棚、机などはすべて木製だ。エントランス前の階段やトイレ、水回りなどにある、色とりどりのタイルが建物全体のアクセントになっていた。2階には人工芝を植えたテラスのような遊び場と、砦をイメージしたという角材のモニュメントがある。
カトリック系の保育園とのことで、子供にこびない適度な抑制も感じられた。建物をひとつ建てるには、一筋縄とはいかない。ここに至るまでには見学者にはわからないいろいろな制約があったことだろう。建築というのは総合的であり、骨の折れる仕事だ。しかしそのぶん得られるものも大きい。 この建物のどこかが、あるいは何かが、それぞれの子供らの記憶に一生残る。それは階段下の狭い空間かもしれないし、ガラスブロック製のトップライトかもしれない。建物が人間を育て、その一部をつくることもある。そんなことを考えながら、園内を見て回った。
夕暮れの中、最後に友人は、建物に向かうアプローチを案内してくれた。子供を迎えに来た親が歩く、樹木の間をゆっくり曲がる小径。ここにも意図があるという。確かに、迎えに来た親の側であれば、この径を歩きながら保育園が見えたとき、なにかほっとした心持ちになるだろう。彼の意図したことは子供を持つ私にもわかる。その感覚が大切なのだと思う。
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