ヴェルナー・パントン展 [ART]
ファンタジー・ランドスケープ
オペラシティアートギャラリーでヴェルナー・パントン展を見た。展示されたのは、彼が設計した椅子と照明器具のほか、ドローイングやテキスタイルなど。'60年代デザインの高揚感とファンタスティックさを感じさせるフォルムと空間、色彩。特にプラスチックの使い方が新鮮だ。パントンはデンマーク生まれ。私は本展で彼の名前を初めて知った。主に椅子や家具、照明、テキスタイルをデザインしたが、自らを建築家と称していたという。よく知られているプロダクトは、プラスチック一体成型の椅子「パントンチェア」だ。
ヴェルナー・パントンが選ぶ色彩は赤やオレンジ、青など原色に近い。しかしその配色には、安らぎや心地よさを感じさせる暖かみがある。フォルムには過度な刺激がなく、北欧特有の穏やかな佇まいと大胆な形態がうまく融け合っている。照明器具は、ランプを直接見せない配慮がなされていた。
ギャラリー内に再現された「ファンタジー・ランドスケープ」を体験した。これが本展のいちばんの目玉だろう。赤から青のグラデーションの布張りによる曲面で構成した、洞窟あるいは細胞の中のような空間(インナースペース)。その曲面に身を委ねてみる。時間の流れが遅くなり、色彩と薄暗い照明が心地いい。ただし、曲面は必ずしも自分の体にフィットするわけではない。
雑味や自然素材を排除し、完全に頭の中で作り出した世界を実現しているにもかかわらず、現代社会を取り囲んでいるような閉鎖的な印象がない点が不思議だった。それは、家具や照明、テキスタイルを作ることにおいて彼が何を目指していたかによるところが大きい。展示されていたドローイングには共感するものがある。パントンの仕事の功績や影響は現在ほとんど見かけないが、'60年代生まれの私の記憶にその感覚が確かに刻まれていることを実感した。
パントンチェア
Swimming pool, Spiegel publishing house
タグ:ヴェルナー・パントン
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