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セレックによるハートフル歯科の治療 [生活]

 鈍い痛みを感じて虫歯の進行に気づき、2年にいっぺんほどの割で歯医者の世話になる。ほとんどが昔治療したところだ。今回も、奥歯に少々気になる感覚が続いたので、三鷹駅南口のハートフル歯科に行った。これまで数年間通っていた歯科医院の治療に疑問が残り、この歯科に変えてみた。
 歯医者には、地道に保険内治療をするところと、保険外治療を積極的に勧めるところがある。ハートフル歯科は後者だった。院内は美容院のような内装で、新しい治療方法を取り入れ、最新機材をそろえている。その最たる物が「CEREC 3」(セレック3)という、セラミック製の修復物を制作するマシン(CAD=コンピューター設計・CAM=機械製作)だ。ドイツ製のこのマシンを使うと、低価格でセラミックの歯を付けることができるという。「現在キャンペーン中につき、インレーの治療で1本2万円。セラミックは10年以上長持ちし、金属の修復物は体によくない」という勧め方だった。キャンペーンというのがどうも胡散臭かったが、安くセラミックが利用できるならと思い、奥歯2本をCERECで治療することにした。
 CERECでは、削った歯を小型の光学カメラで撮影し、CAD上で修復物の3Dデータを作成。その3Dデータを元に、セラミックのブロックをCAMのルーターで削り出してインレーやアンレー、クラウンを製作する。従来の手作りに比べ相当な時間短縮ができ、最短で、歯を削った90分後には修復物の装着ができるという。
 歯の上面と側面を削って撮影し、1週間後に女医(理事長の妻)がCEREC製のセラミックを被せた。ところが家に帰って鏡で見ると、側面の造作が合っておらず、歯とセラミックの間に0.7mmほどのすき間ができている。歯には縦に割れたような線まで入っていた。どうも粗雑だ。数日後にそれを女医に指摘したところ、原因も言わずに早速作り替えることになった。被せた不良品のセラミックを削り取り、歯もさらに削る。販売代理店も立ち会いの元、再び撮影。その際、どの程度の精度なのかを販売代理店の営業マンに聞いたが、具体的な回答はなく、いわく「私自身もCERECで治療していますから、大丈夫です!」。
 待つこと8日間。2度目の装着となったが、ここでさらに思わぬ事態に。出来上がったセラミックを女医が付けようとしたらまったく合わない(治療は北口の分院で行われた)。見ると、最初に付けた不良品と同じ形だった。衛生士が間違って最初のデータで作ってしまったという。信じられない衛生士のミスが続いた。ただし、本当に衛生士のミスなのかは分からない。女医は平謝りで、再々治療になる。
 1週間後の再々治療は理事長が行った。このときも、2本のうち1本は調整してなんとかはまったが、1本はきつくて入らず。CAD・CAMの精度を心配していたが、予想よりもひどいと実感。どうも怪しい。翌日に持ち越しとなり、5回目でようやく収まった。聞けば、理事長が昨日の診療時間終了後、時間をかけてCADの「設計」を行ったとのこと。
 CAD・CAMによる全自動で歯が作れるなら苦労はない。歯科技工士いらずだ。しかし、それはあくまでも理想。ハイテクパーツの製造機といえども人の手による調整は必須。理事長は、撮影後のCADでの設計をきちんとしなければならないと反省していた。これまで50人ほどCERECで治療したが、私のようなケースは初めてだという。運が悪かったのか。いや、そうではないだろう。ハートフル歯科は導入した機材を使いたいがため、きちんとした実証や実用性を得ないまま、不確実な治療を無理強いした。歯科医はマシンによる治療を甘くみており、利潤の追及に走っている。私としては実例50件は少なすぎ、これを聞いていたら同意しなかった。
 どの業種でも、CAD・CAMの導入においては、たいていの場合導入側と販売代理店との間に認識のズレがある。導入側は高額な機材を買ったのだから(CERECは「高級外車2台ぶん」らしい)、黙っていても人件費を切り詰めつつ相応の仕事をしてくれると思ってしまう。販売代理店は最新機種を売りたいがために、いいことばかりの営業文句を説く。実際には、使いこなすために導入側がそれなりの専任担当を割り当て、十分なスキルを習得する必要がある。ちなみに、販売代理店は治療現場の知識・経験がほとんどない様子。今回私はこの両者のすき間に落とされた。本来であれば訴訟ものだ。
 これからの歯科治療において、CERECの有効性はあるかもしれない。しかし現在のところ、削った90分後に装着というのは、治療が軽度の場合に限られる。それ以外のケースでの当日装着というのは時期尚早で、販売代理店の営業文句にすぎない。そもそも、本当にCERECに実用性があるのかという大きな疑問が残る。前述の小型カメラだけで歯の形状を精確にトレースできるのだろうか。レンズを通せば、画像は歪む。実際にはCTスキャンのようなスキャナー装置が必要なのではないか。いちど削ってしまった歯は元には戻らない。患者データの管理も含めて不審であり、私はハートフル歯科には二度と行かない。
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