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古典 [制作]

 京橋のブリヂストン美術館に行く。古典から学ぶために時々ここを訪れる。いうなれば、美術館参りだ。現在は、海がテーマの企画展「うみのいろ うみのかたち」が開かれ、同館の収蔵品の中から主に海がモチーフの作品を展示していた。その中では、藤島武二の小品「潮岬海景」がよかった。ペインティングナイフで、波と岩、海原と空を鋭く描いている。構成が厳密で、なにより色調がいい。
 この美術館の企画展はいつもほとんど収蔵品で構成されるのだが、それでもかまわない。常設展示に貴重な作品がいくつかあるからだ。芸術はやはり実物を見るに限る。色彩の本当の発色やマチエールが命だ。それらが見えると当然、画面構成も明らかになる。画集や写真では作品の価値の一割も見えない。本物と写真は似て非なるものだ。
 先達の仕事は、見る者に謎を投げかけ、一方で勇気を与えてくれる。いつも絵の前に立つたびに、どうやってこのように描いたのかと問いかけてしまう。その答えは明らかだ。100年前の画家が残した仕事の中に、今日も新しい発見があった。私はその発見を言葉にして持ち帰ろうとするが、それは雲をつかむような話。家に帰って、握った手のひらを広げると、そこには何も残っていない。それでも、なにがしかの影響が体に染みこんだことを信じて今日も筆をとる。
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