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一過性全健忘 [生活]

 こんなことをブログに書くのもどうかと思うが、昨夜突然記憶が飛んだ。妻によれば、夜中の3時ごろ何度も「今日は何日だ? 何曜日だ?」「○○(息子の名前)はどこに行った?」「記憶が飛んでる」と言って彼女を起こし、閉口させたらしい。そんなことを言った記憶も頭の中には残っていない。息子は昨年から、妻の実家で生活している。
 今朝、目が覚めて前夜の記憶がないので、寝る前に必ず書く日記をめくると、昨日の欄には日付と曜日しか書かれていなかった。寝る時点ですでにその日の記憶が失われていたらしい。ときどき、酒を飲み過ぎて家に帰るまでの記憶がない、などという話を聞くが、私が今回失った記憶の量はそれどころではない。ちなみに、私はアルコールは飲めないくちだ。昨夜は普段どおりの時刻に退社し、三鷹駅の紀伊國屋でパンを買って帰宅した「らしい」。夕食にチャーハンを食べたことはかすかに記憶に残っているが、寝るまでの(正確には翌朝起きるまでの)記憶がほぼ消えている。そのせいで、夜中におかしい感覚があったことはなんとなく覚えていた。
 なにも書かれていない日記を見て、さかのぼってどのくらいの記憶が飛んだかを推測した。前日の昼間、行った場所と会った人、歩いた道などの記憶はある程度残っている。しかし断片的で薄く、一昨日の出来事に至っても連続した記憶をたどれない。記憶に厚みがなく、喪失したのが数日分なのかもっと多いのか、それすらもあやしい。現在抱えている仕事やかかわった人名などでスムーズに思い出せない部分があった。昨日持ち歩いていたカメラの画像を再生すると、会社からの帰路、とある店の地下への入り口、そして線路と地下鉄を4枚ほど撮っている。店の入り口は覚えているが、そのあと地下鉄を撮ったことはまるで思い出せない。
 混乱しながらも今日の午後、風景画を描きに出かけようとしたら、自転車の後輪がパンクしていた。近くの自転車屋に修理に持って行き、夜引き取る。落ち着かない気持ちで一日家の中に居た。念のため、デッサンを3枚描いてみた。久しぶりに描いたせいなのかもしれないが、目と絵画脳も退行したように思えた。感覚がしっくりしない。絵画の仕事の蓄積も記憶と関係はあるだろう。
 初めての経験だが、記憶がなくなるのは、かなり恐ろしいことだ。治まっている神経症が顔を出してくるほどに。まだらな記憶ゆえ、当然連続性がない。精神が宙ぶらりんの状態に置かれ、自分の存在が危うくなり、不安に襲われる。記憶をサルベージするほどに怖くなった。同じ福島県出身の画家・高村智恵子の最期が頭をよぎる。一日が過ぎだいぶ落ち着いたが、いま書いているこの文章ですら、まともに表記できているのか自信がない。人間は連続性の中で生きていることを思い知る。日常とはすなわち連続性のことなのだ。
 記憶喪失の原因は見当がつかず、悪いモノでも食べたか、どこかで事故にでもあったかなどと推測した。いずれもその形跡はなさそうだ。ネットで調べた妻は「一過性全健忘」ではないか、と言った。解説を読むと、該当する点がいくつかある。中年以降の世代で原因不明の記憶喪失が突然起き、24時間程度で症状は治るという(ただし、その間の記憶は戻らない)。素人判断なのであてにならないが、いまのところ症状としてはそれが近い。とはいえ、脳卒中や認知症などの可能性もある。来週医者に行き、場合によってはMRIで診断してもらおうと思っている。

追記:
後日、地元の中規模の病院に行き、脳神経科の医師に症状を説明すると、MRI撮影を勧められた。MRI検査の結果、脳に確認できる異常は見られないとのこと。「一過性全健忘」だろうとの診断だった。来院者がときどきくる症例だという。治療方法や薬はなく、もしさらに今後なにかあれば、再来院するようにと言われる。
タグ:記憶喪失
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