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菅総理を辞任させるべきか [原発]

 政界では、原発事故対応の手際の悪さを責めて、菅総理を辞任させる相談があちこちで行われている。同じ政党の小沢氏はここぞとばかりに同調者を集め、6月2日の内閣不信任決議になだれ込ませた。鳩山前総理は、辞めなければペテン師だとまで言ってのけた。決議が否決された後も、自民や公明がいつ辞めるいつ辞めるんだとひな鳥のように騒いでいる。原発事故の要因をつくった自分たちを棚に上げて。
 以前もこのブログで書いたが、確かに今回の原発事故における菅総理の対応はまずかった。当初から事態の深刻さを把握できていたとは言い難い。避難区域設定の緩慢さや、市民への放射能汚染情報の周知が徹底されずに隠蔽された点、対策組織の乱立による混乱などの事実を並べても、菅氏の状況判断力や指導力のなさは明らかだ。結果的に被害の拡大をまねいたことは、まずかったでは済まされないレベルといえるだろう。
 もともとこの人には、野党の立場で与党の急所を突くのが得意な印象がある。それが突かれる立場になり、そのうえ党内は権力争いで分裂し、官僚とは乖離、財政はひっぱく、領土問題は顕在化、市民を納得させるような働きもできずにいたところに、巨大地震と大津波、そして原発事故と立て続けの問題に呑み込まれた。現実的には、未曾有の災害の復興とレベル7級の原発事故対策、そしてエネルギー政策の転換を一人の人間の手腕でこなすのはどだい無理な話だ。いまの政治家の中にこの国難を乗り切れるほどの才覚を持った人材がいないのは誰の目にも明らかである。どんな総理でも優秀なブレーンが要る。
 こと放射能汚染対策に限って言えば、菅総理では力不足だ。なにより、緊張感と切迫さに欠けている。すぐにでも別の人が現場で直接指揮を執ったほうがいい。自民党の石破氏くらいの肝がある人物が望ましいだろう(彼がいいとは決して言わないが)。一方で原発事故対策以外について言えば、ここで菅氏の代わりにだれを総理に据えようが、事態は好転しないように思う。事態というのは、国内の原発とエネルギー供給にうずまく利権をこの先どうするかという問題も含めてだ(東北地方の復興に関しては別の機会に考えたい)。
 菅降ろしでうごめく周囲の輩からはなにやらきな臭い煙が立ちこめている。「攻め」の総理は先日来、浜岡原発の停止、およびエネルギー政策の見直しと発送電分離の提案を行った。これは、電力会社との癒着がある多くの政治家からはとうてい出てこない発想だ。菅氏には、原発事故や東電に対する強い怒りがある。これはほかの政治家とは異なる姿勢であり、近年の総理の中においては珍しくまともな意識だ。さらに菅氏はエネルギー問題に関心があり、自然エネルギーの利用についても独自の前向きな視点を持っている。
 きな臭さを漂わせる連中はいま、総理が邪魔で仕方がないと私は推測している。電力会社から献金を受け取る政治家や金づるを離したくない経産省は、すきあらば原発推進路線を再び軌道に乗せたいと思っているはずだ。原発の安全対策を骨抜きにした経産省や汚染情報を隠蔽した文科省、原子力村の面々がそう簡単に白旗を上げるはずもなく、総理を引きずり下ろすためにいろいろと策略をめぐらせているに違いない。なにしろ、原発に反旗をひるがえした福島県知事さえ、検察を使って容易に失脚させたのだから。
 彼らはなぜ、そこまで原子力にこだわるのか。その理由は明らかだ。電力供給の権利を押さえることは、国の舵取り(すなわち税金のコントロール)に大きな影響力を行使でき、治水と同様の意味があるのだ。
 いま、菅総理を辞めさせることは、将来の日本にとってマイナスになると私は思う。彼が辞めれば、原発政策は早晩息を吹き返すだろう。5月31日には超党派の「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」なるものが勉強会を開いた。高速増殖炉「もんじゅ」の存立さえ危うくなった現在、どうやら悪の火だねは地下にもぐろうとしているようだ。同連盟の顧問には鳩山前総理が名を連ねている。打算的ではあるが、原発に反対する市民は孤軍奮闘の菅総理をバックアップすべきだろう。いまが転換点だ。これを逃すと、電力供給の主導権を再び「村」に取られてしまう。
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