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本多真理子展「Red Line Connection#17 〜途方もない間〜」 [ART]

つながりと永続性
 神宮前のギャラリー トキ・アートスペースで開かれている本多真理子さんの個展「Red Line Connection#17 〜途方もない間〜」に行く。街には今日も夏の蒸し暑さが充満していた。風があるのが救いだ。

 彼女が使う素材は太さ2〜3mmほどの赤い毛糸。今回は、画廊の黒い床から数センチ浮き上がるような位置に水平に張られたたくさんの糸と、天井に円錐形に集約された糸とで構成されていた。いつものごとく鮮烈な赤によるワイヤーフレームが強い印象を与える。

 会場で作家に会い、作品に近づくとその上を歩いていいという。彼女の後について、毛糸を踏みながら歩く。毛糸は思ったよりも丈夫だった。円錐の中にも入ってみる。私が今日、この作品に接して感じた点は2つだ。1つは、この赤い糸がなにかのつながりを示しているのではないかということ。

 以前も書いたが、本多さんの毛糸の赤は血液のようでもある。血はそのまま生物の進化とともにあり、記憶をつなぐ。あるいは「血族」というように、種族のつながりの根源ともいえるだろう。赤い毛糸はその両方を体現しているかのようだ。われわれを含め生物は、遠い過去に起きたひとつの始まりから、枝葉のように分岐し長大な時間を経て現在に至る。生物の身体を流れ続ける血はそのつながりをつらぬく証だ。

 張り巡らされた糸の上を歩くと、その柔軟性ゆえか、親近感のようなものを感じる(来場したある女性は寝転がった)。彼女の以前の作品ではヒグマの毛皮が使われ、そのときも作家は毛皮に触れることを勧めた。それは作品にとって重要なことなのだろうといまになって思う。触れることはすなわち、感触によってなにかを伝えるということ。

 もう1つは永続性だ。われわれはこの作品に、無限に続く赤い地平線を見る。縦横無尽に張り巡らされた線には始まりも終わりもない。その無数のラインの中をなにか情報のようなものが永続的に行き交っているイメージがある。ただし、線はでたらめに引かれているのではなく、そこに地形のようなある種の関係性を生じさせている。この持続性と関係性は宮島達男作品にも見ることができる。

 本多さんの本作では唯一、円錐形の頂点だけが関係性の始まりあるいは集約を示しているように思えた。それがどこに通じているのかを想像すること。そのイマジネーションへの誘いが次作への導きを感じさせた。

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