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沖縄自治州 [世界]

 沖縄の基地問題を考えていったとき、沖縄の独立性と人権に行き当たる。沖縄県民にはほかの県民と同じように、独立を保証され安心安全な生活を営む権利がある。しかし現状では米軍基地の存在によってこの権利は無視され、いうなれば人権を否定されている。日本政府は、戦争中から沖縄に大きな負担を負わせてきた。1952年のサンフランシスコ講和条約では沖縄を米国に引き渡した。現在では、日本が米国による安全保障の恩恵を受ける代わりに、島の豊かな自然を壊し、島民の生活から平穏を奪うことに目をつむっている。

 私は以前、横田基地の滑走路近くに立ったことがある。そのとき聞いた米軍輸送機の離着陸時の騒音はひどいものだった。あれを毎日浴びていたら、とてもじゃないが普通の生活はできない。最近私のアパートの横にある道路が拡張された。すると、クルマの交通量が増え、騒音が増した。それだけでも、ここに住んでいるのが嫌になった。沖縄への負荷はそれどころではない。環境破壊や核兵器の持ち込み、沖縄県民の人権を蹂躙する度重なる米兵の犯罪、墜落の危険など、安全保障以前の問題をはらんでいる。

 政治家が迷走し、結局米国の思惑どおりに落ち着いた普天間基地の移設問題。もはや本土の政府に沖縄の未来を任せることはできない。これだけの大きな負担を強いられて、沖縄が日本の一部を担う必要があるのだろうか。地方分権の方向性とは完全に逆行する。国家にその気がないのならば、沖縄は自立の道を選ぶことを考えたほうがいい。自らが決定する権利を持ち、それを主張することによって米軍を撤収させるのだ。そんなことを漠然と考えていたら、同じ考えを持つ人たちがいることを知った。

 沖縄自治州の意見は、先日の朝日新聞のオピニオン欄に掲載された(琉球大学教授・島袋純氏、龍谷大学・松島泰勝氏の記事)。同欄では知念ウシさんが、「日本が沖縄に依存している」とも語った。今日は、沖縄自治州を主張する「沖縄社会大衆党」という組織があることも知る。同党の平良識子さんによればこの党は、「沖縄が国際人権法に基づき、自己決定権を有することを国内外に明確にしたうえで、国内における沖縄特別自治州の実現に尽力をつくしていく」政党だとのこと。

 沖縄から米軍を撤退させ、自衛隊も駐留させない自治州となった場合、「すぐに中国がこの島を占拠するだろう。そうなったらどうする?」と脅す人がいる。問題の根本はこの脅威論だ。敵国を想定して、米国の軍事力、核の傘で守ってもらう。そのためには多少の犠牲や核の持ち込みはやむを得ないという理屈だ。

 軍隊の存在は領土を守るための威嚇にはなるかもしれない。つまりは必要悪だ。しかし私の認識の底にあるのは、実際に戦争になったら軍隊は市民を守らないということだ。太平洋戦争はまさにその本質が実証された戦争であり、満州や沖縄における多くの犠牲によって明らかになった。戦時下において国と軍隊が守るのは、国家という枠組みと領土のみ。ましてや在日米軍は他国の軍隊。彼らが有事に守るものはなにか。日米地位協定が示している。それを踏まえた上で日米安全保障の空想性を考えたい。この点は沖縄の人々がいちばん痛切に感じているだろう。

 沖縄は止まってはいない。いま、静かに変わろうとしている。既得権にかかわりのない世代が動き始めたようだ。あの美しい島に住む人々は、目先の経済システムに縛られている本土とは異なる、相当なエネルギーと意思を持っているのではないだろうか。その力が現れる日がいつかやって来る。
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