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マネとモダン・パリ展 [美術]

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 今春オープンした三菱一号館美術館で、開館記念の「マネとモダン・パリ」展を見る。明治期に建てられた洋風事務所建築(三菱一号館)を復元し、美術館にしたという。その外観は真新しいレンガ造り。内装は白壁で仕上げられ、木製の建具は背が高く、明治の建物を忠実に再現している。展示室をはじめ、館内は全体に薄暗かった。暑い真昼の屋外からこのような室内に入ると、体が慣れるまでに時間を要する。
 展示はマネの作品だけではなく、彼が活躍した時代(1860年代〜80年代)のパリに関する建築資料(主に線画のパース図)や写真、書籍、同時代の作家の作品なども織り交ぜられていた。展示会のタイトルどおり、マネはパリに生まれ、パリに生きた画家。いうなれば、都市の中で活躍した画家だ。その点で同時代の印象派と呼ばれた画家たちと異なる点が多い。
 マネは色彩や構図の追究を主としなかった。どう描くかより、なにを描くか。人物背景や都市、風俗に目が行っている。今回来た人物画では、暗めの背景と明度が高い顔や手の肌色のコントラストが特徴だ。古典的な手法といえるだろう。私は、シェンナやアンバーの色合いと明るい肌の色調の段差が気になった。さらに、シェンナやアンバーの使い方は決して美しくない。
 マネの黒は単色の黒に見える。ほかの画家がさまざまな色を混ぜて最暗部の色を作っていたのに対し、かれはあっさりと単調な黒を使う。「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」のスカーフや帽子、服などがそうだ。「ベルト・モリゾ」からは、色調の少なさと速い筆が見える。構造というよりはバランスが絶妙の肖像画。
 今回、「エミール・ゾラの肖像」や「死せる闘牛士」も来ていた。28歳のエミール・ゾラは近代都市パリに住む作家然とした佇まい。双方の絵とも主題が明確で筆さばきが簡潔だ。サロン会場での見え方を意識しているようにも思え、それが私には少々退屈に感じられた。
 一方、今回の出品で時間をかけて見たのは「温室のマネ夫人」「散歩」「イザベル・ルモニエ嬢の肖像」の3点。いずれも、前述の色調の段差が解決している。より多くの色を使っているからだろう。中でも、「散歩」の色調からは自然が感じられた。粗いタッチによる背景の緑と服の黒の対比、女性の造型がうまくいっている。
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