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作品購入 [美術]

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 先週、ギャラリー由芽に瑛九の版画展を見に行き、同展企画者のM氏に会った。瑛九の名前だけは知っていて、作品は記憶に残っていなかったので、M氏に画集などを見せてもらいながら、この作家の画歴などを教えてもらう。
 1934年にエスペラント語の勉強を始めたり、印画紙に直接物の姿を焼き付けるフォトデッサンの画集を出すなど、先駆的な人だったらしい。フォトデッサンの仕事はマン・レイよりも進んでいたように思う。エッチングやリトグラフ、油彩などでもたくさんの作品を残した。一時期、有名になる前の若い池田満寿夫が瑛九の版画を刷っていたというエピソードも面白い。
 1911年生まれの画家は、享年49歳で亡くなった。本展では霊前のように遺影が飾られており、そこに写っているのは特徴的な丸めがねをかけた黒目の目線が強い顔だ。M氏によれば、今年が生誕99年になり、9をかけて「幻の白寿展」という題名にしたという。展示作品は'50年代に制作されたエッチングが中心で、テーマはさまざまだ。その当時の人間がもっていた柔軟な精神性や夢想が赴くままに引かれた線に現れていて面白い。
 たくさんの版画を見るうちに、ふとその中にあるひとつの作品を入手してみたい気になった。それは「労働者」というタイトルで、二人の男がテーブルで向き合って腕を組んでいる、線が強い印象の絵だ。テーブルにグラスは1つしかなく、もしかしたら、二人ではなく、一人なのかもしれない。画面全体が装飾的ですらある。
 友人からもらったことは何度かあるが、私は美術作品を購入するのは初めてだ。購入し、所有するというのはどういう感じなのかを常々味わってみたいと思っていた。また、芸術家の作品が放つ光を電灯のように受け、その精神の一部からなにかを得たいという気持ちもある。
 後摺りの小さな版画なので、値段はさほど高くない。ギャラリーのオーナーに前金を払って帰路についた。自宅で手にとって見る日が待ち遠しい。
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