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猪熊弦一郎展 [美術]

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 東京オペラシティ・アートギャラリーで、開催前の猪熊弦一郎展を見る。今日はまだ展示物や照明などの調整中。ビデオ作品の展示に少々協力したので、その合間に会場をざっと見て回る。
 猪熊弦一郎の名前は高校生のころから知っていた。いきつけの地元のギャラリーがよくこの作家の作品を展示していたからだ。そのいきさつは不明だが、独特の作風と名前は記憶に残った。
 猪熊弦一郎といえば、まずは顔。今回の展覧会でも、「顔80」などの作品が数点展示された。いずれも、裏表がなく余計な感情が入っていない純粋な造形。実にいろいろな顔があるが根はひとつだ。
 このほか、大作がよかった。特に「宇宙都市休日」の開放感。青空のような背景。想像の世界だからこそ、すがすがしいイマジネーションがわく。都市をテーマにした作品も、コンポジションや色が明るい気分を誘う。この人の作品には、深刻さや様式、社会問題、風俗などが含まれていない。気持ちよく見ることができる。「おおらかさ」や「開放感」といった言葉すらすうっと吸い込まれてしまうような自由があるのだ。それでいて、なにかしっかりとした意志のようなものに裏打ちされている。時代背景は大きく異なるが、いまどきの多くの現代美術が抱える不安感や粘着性など皆無だ。マチスに共通する感覚。
 この人は90歳まで生きた。こうやって通してみると、ドローイングやアクリル画のほかに、壁画から百貨店の紙バッグまで、平面以外にもさまざまな場所で表現してきたことがわかる。しかもそのいずれの場面でも、本来の姿勢を崩していない。
 本展の企画の基になっているのは、画家と谷川俊太郎による1冊の絵本だという。そのため会場には谷川俊太郎の言葉が大きな字で掲示されている。とはいえ、それを読む必要は特にないだろう。言葉はいらない仕事だから。アートギャラリーは天井が高い。この春おすすめの展覧会だ。
タグ:猪熊弦一郎
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