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絵画教室 [制作]

 ここ数年、いくつかの絵画教室や絵を描く市民の会に参加してきた。そこでいつも感じることがある。それは、モチーフのセッティングに対する無頓着さだ。人体しかり、静物しかり。モチーフを重視せずに制作を始める傾向は、どの教室や会場でも同じだ。もっともそれは、教わる側や参加者のせいではない。教える側の問題だ。美大受験のためのトレーニングならまだ理解できるが、期待と不安をいだいてやってくる一般の絵画愛好者にとっては酷な話といえる。
 例えば裸婦。白いクロスの壁で、照明は天井の蛍光灯という環境(場合によっては会議室)において、モデルを描き表すのはなかなかに難しい。プロでさえ苦労するはずだ。私は、蛍光灯で照らされた人体や背景というものが何色を帯びているのか、いまだにつかめない。まして、すみずみまで明るく何もない室内で白い壁と人体との調子の差を出すには高い技術がいる。できるかぎり自然光を利用し、モデルに陰影をつけたい。それが無理なら、背景の調子を落とす工夫が必要だ。また、モデルをパイプ椅子という味気ないものに座らせるのも一考を要する。ボリューム配分の点で考えて、最低でも木の椅子を用意すべきだろう。
 そして静物。学校の美術室にあるような無味乾燥なモチーフ(例えば、ワインの瓶や鏡面の皿、真っ赤なリンゴ、布)を単純に並べて画面を構成させるのは、少々強引すぎる。本当は、モチーフ選びと組み立てから教えるのが正しい。モチーフは自分で(把握しやすいように)組み立てるものだ。平面に無造作にごろりと並べた物体を描くのはかなり難しい仕事だ。多数の参加者がいる関係でやむを得ない面もあるが、なるべく捉えやすくなるよう配慮したい。
 昨今の絵画教室に見られるのは、水深10cmのプールでクロールを教えるような状況だ。それでも皆、四苦八苦してなんとか、絵にしようと試みている。わざわざ難しいものを描く必要はない。教える側は、泳げる深さの水を用意し、描きやすい環境を提供する必要がある。描き手の資質を引き出すために。
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