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アートフェア東京2014 [ART]

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 制作を早めに切り上げ、有楽町・国際フォーラムで開催されている「アートフェア東京2014」に行く。5時に着いたが、終了時刻まで3時間しかないので少し急ぎながら回る。ギャラリーの話を聞きながらまともに回ると、ゆうに5時間はかかる。地方在住の若手作家に注目したい人が数人いた。そのほとんどが女性。男にも見所はあったが、こだわる勘所がずれている人が多いように思えた。
 
 私がいちばん注目したのは、富山から来た江藤玲奈。日本画の技法を使った人体表現は、これまで見たことのないものだった。連想するのは、ベーコンやデュシャンだろうか。しかも単体ではなく、3人あるいは集団を描き、人間が運動している。人体に重なるように綱のような痕跡が記されている。ここでなにが起きているのか、表した内面とはなにか、非常に興味深い作品だ。作家本人はごく普通のトーンで作品を語る女の子だった。

 次に、大竹寛子。こちらも日本画で、青い岩絵の具で蝶を描いた作品。タイトルは「連続する流動的な瞬間」。舞い飛ぶたくさんの蝶から絵の具が下に垂れている。この幾筋もの青の流れと変化が美しい。蝶は精密に描かれているが、タッチを感じさせず、版画のようでもある。手仕事を感じさせない距離感が静謐さを生み出している。

 田村香織の画面は緻密で深い。刻まれた細線が宇宙を構成し、気の遠くなるような空間を創り出しているにもかかわらず、どこかに存在の軽やかさがある。引き込まれるのは実はこの軽やかさのほうなのかもしれない。

 メタリックでSF的なモチーフを描く牧田愛。彼女の作品はCGを軽く凌駕している。鏡面の映りこみが際立ち、まばゆいイメージを放つ。このイメージは手仕事でつくられているに違いない。それだからこそ、見る者の視線を呼び寄せ、精神を溶解させる。溶け込んで画面に融合してしまうのだ。

 柴田七美は絵の具を盛っている。かなりの物質感。厚塗りはよくある手法なのだが、彼女の場合は、そのタッチに魅力がある。面の方向性が強く、思わず読み込みたくなる筆致なのだ。人物がなにかを演じる場面を表すタッチに、彼女なりの言語感覚があるとでもいえばいいだろうか。色調は統一されている。

 北海道在住の山本雄基の重層的な作品。円が何層にも渡って描がかれている。その人肌に近い色彩感覚がレイヤーの物質感とあいまってうまい具合に独特の空間を生み出している。黒い円が構造を支えている点が特徴。私は今回の展示では、物質感とレイヤー構造による作品に注目した。売れている作品にもその傾向があったことは興味深い。

 香月泰男の小品は味わいがある。あの京壁のような地にためらいも気負いもない、ごく絵画的なモチーフが黒などで描かれている。この自由な自律性がとても魅力的だ。熊谷守一の絵は何度も見たが、今回ふと思ったのは、この人の油彩は一度の下絵を最後まで生かしているのではないかということ。最初に赤鉛筆のようなもので描いた下絵が輪郭となり、それを変えることなく、完成までもっていっているように見えた。

 アートフェア東京では、香月泰男や熊谷守一、佐伯祐三など往年の作家の作品を見ること、買うこともできる。近代から現代、新人からベテランまで、幅広い作品が展示されるのが本展の特徴だ。なぜか今年は香月泰男と藤田嗣治が多かった。いずれも小品で、どのくらいの価格設定なのかが気になった。

 終了間際、知り合いの現代美術の画商に会う。持ち込んだ作品がほとんど売れて補充したとのこと。絵の具を針金状にして描き、地図のようなふかんの風景を表現する作家。線が立体になっているユニークな技法とミニチュアのような面白いモチーフだ。平面作品でありながら、立体的な要素もある。いくらだったかは知らないが、売り出し中の作家の作品はたいてい安めに設定される。

 外国の作家も出品していたが、この会場では総じて日本人のほうがユニークで新鮮。新しい文脈をつくりだす土壌を感じた。しかも、以前のような、少女や幼児、アニメをモチーフにした作品がだいぶ減った。スーパーリアルの女性肖像画も少なくなったのはいいことだ。モチーフ、技法ともに興味深いペインティングや写真に出会い、刺激を受けた。

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