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浅井真理子「drawings on carbonless duplicated book」 [ART]

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 風景や建物、目、地形、あるいは布のような、さまざまなイメージが現れては消えていく。Toki Art Spaceで浅井真理子の「つるつるのみちをとおってかなたをさわりに Walk on the slippery road to touch the surface of far in the distance 」を見る。
 感圧紙を束ねたノートへのドローイング「drawings on carbonless duplicated book」シリーズ12冊のうちの最後の1冊。下敷きを使わず、感圧紙(上用紙)に断片的に描かれたイメージは数ページ(下用紙)にわたって痕跡を残し、重なりながら減衰する。この重なりはなにかの物語を生成し、減衰は時間の流れを感じさせる。立ち現れる物語は見る者によって異なるだろう。過ぎゆく時間の感覚も同じく。
 鉛筆で上用紙に描かれた表層がオリジナルだとすれば、その後に続く感圧による青い痕跡はすべてコピーだ。このコピーの反復が表現する余韻のような奥行き。そこにある静謐さ。ときに裏面から描き足し、色鉛筆でわずかに加色したページもある。その仕事から作家の資質の確かさを感じた。
 本作は、ノルウェーのトロムソ滞在中に制作したという。作品は白い手袋をして閲覧する。ページをめくる所作は必然的にていねいになる。ドローイングのほか、作品がもつ繊細さと所作によってもまた、特別な体験を促す。この体験からくる物静かな印象こそが、本作が内包する世界の断片であり、記憶だ。ページをめくりながら、私は別の空間と時間を旅した。



「The Library 2014」-Exhibition of the Book art-
Toki Art Space 2014年8月5日-16日
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