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鈴木大介 ギター・リサイタル [音楽]

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 「映画名曲コンサート」と題した鈴木大介のギター・リサイタルを聴く。会場は三鷹市芸術文化センター。

 2006年に彼のアルバム「カタロニア賛歌〜鳥のうた/禁じられた遊び〜」を聴いたとき、武満徹が言ったように、私もまた「今までに聴いたことがないようなギタリスト」という感想をもった。今回実際にホールで演奏を聴き、以前感じたことの理由が分かった気がした。

 「カタロニア賛歌」はスペイン音楽を演奏したアルバムだが、このギタリストのレパートリーは幅広い。今日のプログラムは前半が映画で使われたクープラン、スカルラッティ、バッハなどのバロック音楽、後半が映画音楽集だった。卓越した技術と演奏表現力をもち、ギター本来の音楽性を最大限に引き出す。ライブではCDで聴くよりも音質が柔らかく、表現に柔軟性があった。

 鈴木大介の音楽には温かい血が通っている。特に、スペインやイタリアの血統が色濃い。これは、それらの土地から影響を受けたというよりも、彼が本来持っている資質なのではないだろうか。より正確にいえば、スペインやイタリア的なもの、ということになろうか。気質や悲しみを備え、これまでの日本人にはなかった感覚で表現する。プログラムの後半で演奏されたエンニオ・モリコーネ「ニュー・シネマ・パラダイス」やニーノ・ロータ「ゴッド・ファーザー」、フランシスコ・タレガ「アルハンブラの思い出」で彼の特性が十分に発揮される。

 彼が奏でる音楽には人々がまだ文化芸術への希望を保っていた近代の記憶が刻まれている。それは決して古くさいものではなく、文化が熟成しつつある時代の空気が違和感なく新鮮な状態のまま織り込まれ、一つひとつの音に確かな手応えがあった。

 今日演奏したすべての曲が輝きをもっていた。プログラムの終盤で弾いた武満徹の『ワルツ〜「他人の顔」』は、さまざまな音楽家が取り上げているが、鈴木大介による解釈、アレンジもいい。曲想をきちんと捉えているということだろう。技術や表現力、体温、解釈する力のいずれをも備えた演奏家だと思う。特に、一音一音に血を通わすことを大切にし、これを成し得る希少なギタリストであるのは間違いない。次は、「カタロニア賛歌」のような張りつめた演奏を聴いてみたい。

【曲 目】
 フランソワ・クープラン(A.ディアス編):神秘の障壁
 ドメニコ・スカルラッティ:ソナタ K.213/544/263
 ヨハン・セバスチャン・バッハ(D.ラッセル編):G線上のアリア
 ゲオルグ・フリードリヒ・ヘンデル:サラバンド
 ヨハン・セバスチャン・バッハ:シャコンヌ

 ルイス・バカロフ:イル・ポスティーノ
 ヘンリー・マンシーニ:ひまわり〜シャレード
 エンニオ・モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス
 ニーノ・ロータ:ゴッド・ファーザー・メドレー
 フレデリック・ショパン(F.タレガ編):ノクターン
 フランシスコ・タレガ:アルハンブラの思い出
 ジョージ・ガーシュウィン:ス・ワンダフル
 林光:裸の島
 武満徹:ワルツ〜他人の顔
 伊福部昭:サンタ・マリア
 アンヘル・ビジョルド(R.ディアンス編):エル・チョクロ
 アントニオ・カルロス・ジョビン:イパネマの娘

アンコール
 J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 BWV1007より プレリュード
 禁じられた遊び~A.トロイロ:スール
タグ:鈴木大介
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