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水彩画の個展を開く [美術]

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 6日間の日程の個展が終わった。今回は初めての地元での開催。場所はカフェ・ギャラリーだ。以前ここでグループ展を行ったときに空間が気に入ったので、一人で借りることにした。
 カフェというよりも食事をする人が多く、内容はレストラン。土日に限らず、平日も家族連れなどで賑わう。その横に隣接した小さな貸しギャラリーは、道に面した側がはめ殺しのガラスになっていて、外からも見える八畳ほどのスペースだ。
 今回展示したのはF4〜F6までの水彩画の小品。モチーフや色調が近い作品を選び、額もそろえた。いままで私は、個展やグループ展で自分の作品に値段を付けたことはなく、プレートに初めて価格を表示してみた。美大を卒業してもうだいぶ経つというのに、いまごろ価格を表記しはじめるとはのんきにもほどがある。バブルのころならともかく、かなり遅きに失している。しかしそれは重々承知。少しは人様に見せられるくらいのものになったか、というレベルにすぎないのだ。
 中堅の作家である同世代の友人に聞くと、'80〜90年代とは異なり、近年絵は全然売れないという。特に抽象の油彩画は厳しいらしい。確かに、友人たちのグループ展や個展に行っても、売れるのは1、2点で、しかも価格が1〜2万円の作品が多い。村上隆や奈良美智など、一部の有名現代美術家は別にして、旧来の画廊で開かれる個展の絵は中堅であってもなかなか売れない時代になった。
 個展をする前に、画材店の店主や美術研究所の講師などに、絵を売ることについて聞いても、まあ売れないだろうという見立てをされた。こちらは一縷の望みをもっていたのだが、周囲の目はすこぶるドライだ。確かに、いろいろな情報から判断して、「絵を気に入って買う」という行為に及ぶ人が会場に足を運ぶ確率が低いことは明らかで、単にDMを配布しただけではダメだろうとは思っていた。
 カフェ・ギャラリーなので、カフェに座りながら来客の様子を見ることができる。中心の客層は30代の若い夫婦か子ども連れが多い。お茶や食事に来た家族はまずギャラリーには入らない。ギャラリーに足を運ぶのは、一人で来た女性か、二、三人連れの20代くらいの人たちだ。いずれにせよその数はわずか。もちろん、絵の内容や展示方法によっても状況は異なるだろうけれど。これまでこの場所や近場の画廊で開かれたほかの作家の展示にも何度か訪れ、6日間の自作展を見て、カフェ・ギャラリーあるいは三鷹という街で絵が売れるか、売れないかが分かる気がした。結局私の絵は一枚も売れなかった。そのぶん、遠方から見に来てくれた友人や親戚、アドバイスをくれた知人には感謝している。
 貸し画廊を借りて展示を行っている画家は、制作以外に多くの仕事をこなす。展示作品の方向性、会場探し、DMなどの宣伝、額装、搬入、展示設営、来場者応対、撤収搬出、会場費支払い、そして売れ残る作品の保管など。画家の多くはこれらの作業に時間をとられて、マーケティングを考える余裕がない。一方で、画廊と契約するか、企画画廊に声を掛けてもらえる画家は、自己プロデュースに煩わされることなく制作に集中できる。その代わり、売り上げの半分は画廊にいく。
 絵を買うという行為は、服や家具を入手するのとは動機が異なる。絵にはもともとニーズがない。そのため、絵が売れるにはいくつかの条件が必要だ。私の乏しい経験で気がついた条件とは、まずモチーフと傾向、完成度、そして展示場所、画廊のバックアップ、販売の継続性だろうか。しかし、それらの条件がそろったとしても、絵画という商品は必ずしも売れるわけではない。絵を評価してくれる人イコール買う人ではないからだ。来場して「いいね」と言ってくれる人と、実際に購入する人(その絵を欲しいと思う人)の間には大きな隔たりがある。親戚や知人以外で絵を購入してくれる人は、実際のところ少ない。もしかしたら、この世界に一人か二人か。つき詰めれば、偶然を待つしかないのだが。
 絵の価値を分かってくれる人が来る「場所」はどこか。画廊も、ただの貸スペースからきちんと作家をバックアップする企画画廊までさまざま。自分の作品を企画画廊で取り上げてもらうにはどうすればいいのか。もちろん、年月を要するだろう。作品の内容を高めることはもちろんだが、私のような遅れてきた者は、そのあたりから考える必要がありそうだ。

 
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