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野川 [地域]

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Nogawa

 このところ野川付近で制作を続けている。そこは、平地が続く三鷹において、地形の変化がある数少ない場所だ。特に、野川の北側にある「国分寺崖線」は、なだらかな崖地になっており、斜面の木立は武蔵野の原風景を思わせる。
 野川の水は近年、だいぶきれいになった。十年ほど前になるだろうか、水量の乏しいこの川にも生活排水が流れ込んでいて、いまでは信じられないことだが、コンクリート製の排水口が川岸にあった。三鷹近辺だけでも排水口は数カ所あり、周囲の自然環境との落差に残念な気分になったものだ。私は水質に問題があると思い、散歩に連れ出した子供に水遊びをさせなかった。それが条例でもできたのか、あるときから排水の流れがぴたりと止まった。これにともない、川の水は徐々に透明度を取り戻していった。
 野川には以前から鴨がいた。さらに鯉が泳ぎ、鷺も飛来していた。ほかの地域ではどうかしらないが、水質がよくなったかわりに、鯉は姿を消し、鷺も見なくなった。もっとも、三鷹あたりは水深が浅いせいもあるだろうか。一方で、鴨の数は増えたように思う。夏の間は、川遊びをする人間の親子連れがいて騒がしいが、秋冬になれば、鴨のグループが悠々と泳いだり、川岸を歩いている。
 人間の親子連れといえば、彼らは夏になると野川周辺の自然環境を満喫する。網を手に、川で魚をとり、川岸ではトンボや蝶などの昆虫採集。国分寺崖線からの湧水が出る岩場(上の台地に降った雨水が崖下土地に湧いて出る)にはカニがいるのだが、そういった生物も捕獲してしまう。私はカワトンボなどを見かけると(たぶん自然観察園で羽化したもの)、どうか人間につかまらないように、と祈った。自然と触れ合うことは大切だが、希少な生物を興味本位で捕獲するのはやめてほしいと思う。
 野川公園を西に進むと以前は、調布・府中・小金井にまたがる二枚橋という場所にゴミ焼却場があった。この施設は野川に隣接しており、その無粋な紅白の煙突とそこから立ち上る白い煙は自然環境に恵まれた地域には似つかわしくなかった。野川を散策しながらその煙突が見えると、これまた嫌な気分になったことを思い出す。この焼却場も廃止され昨年から取り壊しが始まり、紅白の煙突はすでに消えた。最近野川に通うようになった理由のひとつでもある。
 そういうわけで、野川およびその周辺の環境は以前よりも改善された。水質が向上し、焼却場がなくなったことは喜ばしい。これに関してはいうことはない。最近私が気になるのは、川岸の管理がゆきとどきすぎている点にある。低木や雑草はすぐに刈られ、湧水が出る川辺の整備も進んだ。よくいえば、きれいになった。しかし、半面つまらなくなったのも事実だ。神代植物公園などもそうだが、低木や下草をすべて刈り、荒れた場所をすべて整えてしまうと、風景がゴルフ場のようにのっぺりする。つまり、味気ない。例えるなら、日本の庭とヨーロッパの庭の違いとでもいえばいいだろうか。野川公園も広々としていいところだが、その昔は国際基督教大学のゴルフコースだったという。風通しがいいにせよ、どこか人工的だ。
 自然本来のかたちをできるだけ残すという精神がなければ、野川といえども、ただの遊歩道になってしまうだろう。本来発見すべき自然の本質が取り除かれるのは好ましいことではない。要するに、計画者の考えが浅い。人が歩きやすいよう、あるいは危険がないようにと、本来の姿を安易に変えてしまう。その風景の中で、いつも私はモチーフを探すのに苦労している。

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国分寺崖線
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