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内部被曝と劣化ウラン弾 [放射性物質]

 肥田舜太郞氏と鎌仲ひとみ氏の共著による新書「内部被曝の脅威」を読んだ。2005年6月に発売された本書は、3.11の原発事故以降を生きる私たちにとって、示唆に富む内容に満ちている。現在の状況を的確に予言したような話が書かれており、放射能汚染に脅えるいまのさまざまな問題が先んじて指摘され興味深い。
 肥田氏は1945年の広島において自身も原爆で被曝した医師であり、多くの被爆者の診察・治療に尽力し、同時にいまにいたるまで救援活動を続けてきた。同氏が60年以上にわたり注目してきたのは、現在の私たちが日々警戒している内部被曝だ。微量の放射性物質を取り込むことによって起きる内部被曝。それによる健康被害の実態、晩発性障害こそ、いま日本人が最も知りたいことなのはいうまでもない。
 内部被曝による健康障害は、症状の差こそあれ、広島原爆の被害者の身体にすでに表れていた。しかしこの事実を加害者の米国は巧妙に隠蔽した。当時告知された「広島・長崎の原爆被害はアメリカ軍の機密であり、何びとも被害の実際について見たこと、聞いたこと、知ったことを、話したり、書いたり、絵にしたり、写真に撮ったりしてはならない。違反したものは厳罰に処す」という厚生大臣の通達は、なにかいまの福島県や放射能汚染をとりまく状況、暗黙の空気に似ている。
 ウラン238を用いる劣化ウラン弾は核兵器と呼べるだろう。着弾時に数千度の高熱を発するウランが戦車の厚い装甲をたやすく貫通する。その際に放射性物質を放出し、これが膨大に使用されたイラクでは、子供をはじめとする多くの市民にさまざまな健康被害を引き起こした。しかし、米国はその事実を否定する。そればかりか米国は原子力産業を守るために、湾岸戦争に参加した米軍兵士の劣化ウラン弾による健康被害や、自国の核関連施設の放射性物質もれによる市民の被害をも認めていないという。
 低線量被曝や内部被曝による健康被害を認めることは兵器本来の目的から外れることになるので、つまり敵を倒す目的以外のものとなり、劣化ウラン弾の使用を禁止する事につながる。現在、多くの国々が劣化ウラン弾を所有している(本書にはその中に日本も入っていると記載されている)。第二の核兵器ともいえる劣化ウラン弾の威力は大きい。地下施設の攻撃にも使われ、現代の戦闘に欠かせない兵器となった。これが使われた場所においては必ず放射能汚染が伴う。それは小さな原子爆弾だ。
 核兵器、原子力発電、放射能汚染、内部被曝、政治、経済——日本と米国は絡み合う円環の中で相互につながりながら存在する。そのしがらみをリードするのは常に米国だ。そこには多くの嘘が潤滑油のように存在する。産業や経済を成り立たせるために用意された嘘の成分があまりに多いので、思いつきの批判では太刀打ちできない。
 第二次世界大戦後の米国が行っているのは、兵器の切り売りと言っていいだろう。例えば原子力発電は核兵器の二次利用だ。兵器で守ってやるから国土の一部をよこせと要求する。守ってやっているのだから、うちの製品やサービスを買えという。それに日本は服従する。
 原子力の問題、内部被曝の問題は、米国とセットで考える必要がある。なぜならば、現代の日本が利用している科学技術の多くが米国から来たものだからだ。乱暴に言ってしまえば、米国の科学技術は足し算しかできない。つまり、なにか問題が起きるとそれを別のものを使って解決することで次にコマを進める。新しい何かを創出することで、この世の中に解決できないことはないと思っている。しかし、原子力に関してはその理屈は成り立たない。少なくとも私はそう思う。そこで生み出される放射性物質の処理にはなんら解決策はない。現在の米国人と日本人はそれを知りつつ、ごまかしたり、複雑化して問題を数十万年の未来まで先延ばししているに過ぎないのではないだろうか。
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