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2度目の敗戦 [原発]

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 友人の建築家S君とTwitterでやり取りをしている中で、彼が今回の福島原発の事態を指して「敵国はないが敗戦に近い」と書いた。この言葉は、まさにいまのわれわれが感じる心の傷の原因を表している。私もまた、治らない風邪にかかったような気分が3月11日以来ずっと続いているが、それは確かにそういうことなのだと思う。
 日本は、太平洋戦争と同じ過ちを犯した。今回は軍人こそ登場しないものの、官僚、政治家、企業、メディア、学者、そして国民が目先の欲望におぼれて、原子力発電という名の「戦争」を始めたのだ。もとより、この戦争に勝ち目はない。次世代の未来を食いつぶし、数十万年後まで問題を先送りするだけの馬鹿げた戦いだ。最後に手元に残ったカードは、放射能を含んだ空気を空に排出し、高濃度に汚染された水を太平洋に流すという、絶望的な窮余の策しかない。
 これはまるで、太平洋戦争の愚策と同じだ。驕りの末に自らを追い詰め、前にも後ろにも進めず、どうすることもできなくなった、あのときの日本人の姿そのままである。前回と異なるのは、汚染された土地に復興の機会が訪れないかもしれぬ点だ。1945年の被爆地は復興したが、2011年の被曝地の将来は定かではない。被曝地に限らず、敗戦の影響はこれから数十年にわたって広く日本を覆う。見えない猛毒によって風土は蝕まれた。この先は繁栄とはほど遠い未来が待っている。立ち直るには相当な時間がかかるはずだ。
 今回はたまたま福島が主戦場になったが、戦地はまだたくさん残っており、地震列島のそこかしこでいまだに核を燃やしている。日本の発展には原子力発電が必要だという言葉を信じ、いまだこの戦争の怖ろしさに気がつかぬ市民も多い。なにを大げさな、と思うかもしれない。そのときは、この国に対する他国の目を見るがいいだろう。大気と海洋を汚し、無策な政府とそれを糾弾することすらできぬ市民のいる島国を見る厳しい目線に、はたして耐えられるか。

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Sanchai

太平洋戦争の敗戦時のことはよくわからないのですが、私も今回の震災には同じような気持ちに駆られました。
by Sanchai (2011-04-10 23:00) 

yotaka

いつも読んでいただいてありがとうございます。何かに敗れ、大きな傷を負った気がします。
by yotaka (2011-04-16 00:45) 

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