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ドミニク・ペロー 「都市というランドスケープ」 [建築]

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梨花女子大学キャンパス・センター(ソウル) 2004-08

 先日、東京オペラシティ アートギャラリーで建築家ドミニク・ペローの展覧会を見た。副題は「都市というランドスケープ」。本展は建築家自身が会場のデザインや構成などを手がけたため、その組み立て方が面白かった。

 会場に入るとまずプロジェクターによる5つの上映スペースがあり、ペローの建築をさまざまな角度から撮影した短編映像を鑑賞できる。内容は、自転車競技場/オリンピック・プール、フランス国立図書館、梨花女子大学キャンパス・センターなど。上映スペースは、彼が実際の建築物に使用したのと同じ金属製のメッシュカーテンで区切られた。カーテンは大きな簾のようで、ここから、壁または仕切りを排除した彼の空間意識(中間領域)を感じとることができた。通常のパーティションと異なり、閉塞感がない。実際には、隣で投影されている映像が透けて見えるので意識が拡散する。

 液晶モニターによる映像コーナーで見たビデオ「建築家の11の言葉」での、彼の話が興味深かった。“絵画が終わった”後に関するバーネット・ニューマンの言葉や絵画の復活を、建築の再考に照らし合わせている。ビデオの一つの章「疑い」で彼は、建築を疑うこと、そしてそこから豊かな、正しく、正確なものを抜き出すと語った。そのわずかなものを、感覚と知覚のフィルターを通して再解釈する。これは、そのまま風景画制作の仕事に当てはまるだろう。

 建築家は最初に敷地(建築予定地)へ下見に行くとき、観察者となり、その場所を描写する。面白いことに、そのとき建築家は必ず認識を間違えるのだという。しかし、そこに豊かな創造が生まれ、建築家は未完成を受け止める。彼は建築によって、都市の中に新たな風景を生みだそうとしている。大地と建築との親密な関係性、そして共有性。「今日の建築において、私は歴史よりも地形(ジオグラフィ)が優位にあると感じています」。

 映像コーナーの次は広い展示スペースで、彼がこれまで行ってきた仕事(プロジェクト)で使われた模型や、外観写真、拡大した断面図などを見ることができる。プロジェクトは、実現されたものと計画だけに終わったものを含め、「都市の地形」「自然への接地」「場の発見」「ランドスケープとしてのスカイライン」「地形の変容」の5つの“Table”に分けられていた。複数のプロジェクトが、模型のほか、実際に使用された素材やライトボックスに張った写真などによって表現された。

 ドミニク・ペローの建築を実際に見たことはないため多くは語れないが、彼の作品に現代建築の変容の一端を垣間見た気がする。都市という地形に組み込まれる建築の新しい在り方と風景。特に近作の「梨花女子大学キャンパス・センター」は強く印象に残る。このプロジェクトに関して彼は、「地形にできた単なる亀裂、もしくは断層の様相をしています。地形に加えられた切れ目はヴォイド(空隙)を生み、それは同時にサーキュレーションの要として機能しています」とカタログに記載している。私はペローの建築の特徴は、敷地の空間や地形と触れ合う境界(マチエール)にあるように思った。

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ドミニク・ペロー 「都市というランドスケープ」展 会期:12月26日まで/場所:東京オペラシティ アートギャラリー
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