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禅林寺通り [街]

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 三鷹には、南口の駅前通りと平行に伸びる「禅林寺通り」という名の細い道がある。その名のとおり、この道の突き当たりには禅林寺という寺が位置し、太宰治の墓があることで有名だ。具体的にいうと、太宰治の墓は突き当たった白い塀のすぐ向こう側に建っており、その近くには黒松や、見事な桜が枝を広げている。なぜかほとんど話題に上らないが、太宰治の墓のすぐ斜め向かいには森鴎外(森林太郎)の墓もある。以前書いたが、駅に近い方のこの通り沿いには現在5棟のマンションが建築中で、日中は非常に騒々しい状況になっている。
 禅林寺通りは風情のある通りだった。過去形になってしまうのが残念だが、通りに面した住宅がこの数年の間に、改築やマンションへの置換えでことごとく姿を消してしまったためだ。何が気に入っていたかと言えば、昭和の香りを残したたたずまいの玄関を構えた住宅。夕方このあたりを通ると、それぞれの玄関に質素な外灯が灯り、懐かしさと気持ちの安らぎを覚えた(私が単に古い住宅好きということもある)。ただそれだけのことなのだが、各戸の明かりとわずかにデザインされた門扉や玄関ドアからくる印象が、いかにも人が住む「街」らしかったのだ。近年の住宅やマンションに、その風情はない。丁重に他者を拒絶する。思えば、もう少しその風景を写真に収めておくべきだったと後悔している。この数年がその最後のチャンスだったのだ。春になると、たくさんの真っ赤なバラを塀や壁づたいに咲かせる家、蔦に覆われた賃貸住宅などは撮っていたのだが。東京の各地にもまだ、このような通りや住宅が残ってはいるだろう。しかしそれらもあと数年の命かもしれない。無味乾燥な現代の住宅やマンションに取って代わられる。残すことはかなうまい。写真に収めるならいまのうちだ。
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